何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで……「失敗だらけの道」を歩んでいるかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、Facebook Japanで執行役員・広報統括を務める下村祐貴子さん(40歳)の後編です。

妊娠、出産、海外転勤、全部とってみた

 新卒でP&G(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)に入社し、25歳でIT・生産統括部門から広報部門へと転籍、27歳で結婚した下村祐貴子さん。広報での仕事が軌道に乗る中、28歳のときにシンガポールへの転勤を打診された。

 「P&Gのアジア地域での本社機能がシンガポールへ移ることによる転勤でした。当時、本社の広報部に行けるのはアジア中から1人だけ。夫に相談したら、『絶対に行ったほうがいい』と即答でした」

 またとないキャリアアップのチャンス。夫の了解は得られている。それでも、下村さんはオファーを受けるかどうか迷った。理由は「子どもを産みたかったから」だ。

「妊娠したら転勤を待ってもらえますか?」

 「私は昔からとにかく赤ちゃんが好きで、絶対に子どもを生みたいと思っていました。2人は欲しかったので、20代のうちに産んだほうがいいな、と。でも、転勤のオファーも引き受けたい。思い余って、上司に聞いてしまったんです。『もし、私が今すぐ妊娠したら転勤を待ってもらえますか?』って」

 まだ妊活すら始めていなかった下村さんに、上司は「もちろん、待てるよ」と理解を示してくれ、その数カ月後、妊娠した。

「まだ妊娠もしない私にそんなことを言ってくれるなんて、ありがたかったですね」
「まだ妊娠もしない私にそんなことを言ってくれるなんて、ありがたかったですね」

 29歳で出産、夫もシンガポール転勤が決まり、長男が7カ月のときに一家でシンガポールに引っ越すことになった。「実は、これが失敗の始まりで……」