チームとは何かを失敗から学んだ

 人材コンサルティング会社で活躍していた川原さんの仕事ぶりを見たことで、近藤さんは「チームマネジメントは私の強みではない」と実感したと話す。

 「自分に向いていないことを頑張ろうとしても、建設的な仕事はできないと気づきました。 このときに改めて自分の強みを整理して、苦手なことは他の人に任せることにしたんです。マネジメントは川原に一任し、私は業務の進捗確認と片づけコンサルティングに集中。そうしたら、社員とほどよい距離感ができて、接し方も変わりました。川原からチームとの関わり方を学んだことで、チームづくりの悩みが解消されました」

 20代後半で、マネジメントにおける大失敗をした近藤さんは、30代後半になった今、自身をこう振り返った。

 「あの頃は、周りの人への感謝の気持ちが少しだけズレていたのかもしれません。『いつもサポートしてくれてありがとう』と感謝しながらも、どこかで自分の感覚を優先していたのだと思います。チームとは何かを分かっていなかった。今は、チームとは違う役割の人が集まって、一つのプロジェクトや目標を達成していくものだと分かりました。自分と同じ仕事のやり方や考え方を人にも求めるのは違うと、20代で気づけたのは本当によかったです」

 その後、29歳のときに川原さんと結婚。公私ともに心強いパートナーを得て、翌年には第1子を出産、米国でのビジネスチャンスにも恵まれた。ところが、育児と仕事に取り組む中、近藤さんは大きな後悔をすることになる。

「自分の仕事や行動にこだわりを持つことは大切だと考えていますが、行き過ぎると自分も他者も苦しめることになると学びました」
「自分の仕事や行動にこだわりを持つことは大切だと考えていますが、行き過ぎると自分も他者も苦しめることになると学びました」

後編「近藤麻理恵 子どもの涙で気づいた大切なこと」に続く

取材・文/高橋奈巳(日経xwoman doors編集部)写真/稲垣純也

後編「近藤麻理恵 子どもの涙で気づいた大切なこと」では、次のストーリーを展開

■結婚、出産を経て肩の力が抜けた30代
■キャリアと家庭のバランス感覚を見失う
■仕事の量に自分を合わせていたことが30代の失敗
■片づけをすると、自分自身が見えてくる