何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで……「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、スマートフォンやタブレットによるキャッシュレス決済サービスなどを行うhey取締役の佐俣奈緒子さん(37歳)の失敗図鑑(下編)です。
佐俣奈緒子 夫婦で大黒柱交代「35歳までに2人産む」
hey佐俣奈緒子「女性のキャリアに産み時なんてない」 ←今回はここ
起業2年目、14億円を超える資金調達をしつつ、事業成長の舵(かじ)を切りながらも31歳で第1子を出産した佐俣奈緒子さん。
妊娠中に、出産による不在でも組織が回るように準備を念入りにしたつもりだったが、産後直後に「社内の組織がうまく機能していない」という危機感を抱いた。
そこで、佐俣さんは産休を切り上げ、わずか1カ月で復帰。早く立て直そうと気持ちが焦る中、慣れない新生児の育児と仕事の課題が重なり、身動きがとれない状況に陥ってしまったという。
初めて、自分がコントロールできなくなる
「それまでは100%、120%の状態の仕事モードで稼働して、パフォーマンスを出してきました。当然、仕事でトラブルはつきもの。そんなときこそ、フルでコミットすれば解決できていましたが、産後は子育てで体力・気力を奪われ、時間的な制約もあり、思うように自分が動けないことに気づきました。
気持ち的には、30%ぐらいの稼働で結果を出さなくてはいけない状況なんです。それまではどんなことでも気合と根性で乗り切ってきたのに、どうにもならなくなったのは、初めてでした」
産後は、実家やベビーシッターの助けを借り、夫とも育児・家事を分担。それでも授乳だけは人に頼めず、自転車で10分ほどの距離にある自宅と会社を1日最低3回は往復する毎日だった。無理を重ねているため、体調も万全ではない。産後のホルモンバランスの崩れから、メンタル面でも落ち込みがちになった。
「今、思い返しても、あの頃が一番疲れていましたね」