何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで…「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、シンガーソングライター/作詞作曲家として活躍中で、テレビアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマ曲でヒットした「紅蓮華」を手掛けた草野華余子さんの失敗図鑑(下編)です。

「紅蓮華」作曲家 草野華余子 情熱と声を失ったあの日
草野華余子 チームで紅蓮華制作、死ぬまで音楽と生きる ←今回はここ

「カッコいい自分でありたい」という呪縛

 日本の音楽シーンで存在感を放つシンガーソングライター/作詞作曲家の草野華余子さん。

 音楽への情熱を失いかけた20代の挫折を経て、35歳のときに、これまでの活動名義「カヨコ」から本名の「草野華余子」に改名するまで、心の中では「なりたい自分」と「現実の自分」の間で揺れ動いていたという。

「本当の私は、人を笑わせたり、いじられたりするタイプ。2017年にアルバム『カッコ悪い自分と生きていく』を出したときから、気持ちが変わってきました」
「本当の私は、人を笑わせたり、いじられたりするタイプ。2017年にアルバム『カッコ悪い自分と生きていく』を出したときから、気持ちが変わってきました」

 「最初に活動名義を『カヨコ』にしたのは、ステージ上では強く、カッコいい自分でありたかったから。実際にカッコいいことばかり歌おうとしていたけれど、上京したとき、レコード会社のディレクターさんから『なりたいものとなれるものは違うよ』と言われて。確かにそうだなと思ったんです。私は大好きなB’zの稲葉浩志さんにも、椎名林檎さんにも、宇多田ヒカルさんにもなれないな、と。じゃあ、何になれるんだろうと、それからずっと考え続けていました

 悩みながら「カヨコ」として音楽活動に取り組む中、気持ちに変化が訪れた。自然体でパフォーマンスする姿を見たファンから、カッコいいと言われることが増え、少しずつ「自分は自分でいい」と思えるようになったという。