人生初の大多数ダメ出し

 「『生意気だ』『つまらない』『言っている意味が分からない』『上から目線だ』――。自由回答のアンケートに、わざわざ書くか! っていう内容ですよ(笑)」

「あんなに大勢の人から露骨に批判されたのは人生初。後にも先にもあの1回だけです」
「あんなに大勢の人から露骨に批判されたのは人生初。後にも先にもあの1回だけです」

 日本の中小企業を元気づけたいという善意から、自社の成功事例を包み隠さず、一生懸命話したのに――。それが生意気に映ったのは、当時彼女は30代前半で、聴講者は50代と60代の男性が中心だったせいだろう。悔しさのあまり、泣きそうになった。でも、すぐに冷静さを取り戻し、ちょっと待てよ、と思い直した。彼らは私に何を求めているのだろうか。そして、おもむろにゴミ箱に投げ捨てたアンケートを取り出し、テーブルの上に伸ばして並べて考えた。

ボロクソのアンケートから学んだこと

 「私は、原価管理や進捗管理はこうすればうまくいくなど、事例をたくさん挙げたほうが実用的で喜ばれると思ったんですが、それだと聞き手はつまらなかったんですね。考えてみたら、実用的な事例といってもうちの成功例ですから、自慢話に聞こえる人がいて当然。ならば、“つまる”ようにするために、面白い話をして楽しんでもらおう! と。できるだけエンターテインメントに徹するため、『主婦から突然社長になった町工場の娘』というキャラクターを立たせて、物語仕立ての内容に変えました。そうしたら評判になって、講演のオファーが増えたんです」