「お笑いの世界に戻る!」と決めた理由
「もともと私は、細かい作業やルーティンワークが得意ではなかった。それが分かっていたから芸人になったのに、自分何してるんやろ? と思ったんです。毎日同じことをして、うまくできなくて落ち込んで……。やっぱり事務の仕事は向いていないと気づきました。
でも、会社員をやってみたからこそ、自分の苦手なことがあらためて明確になりました。やっぱりテレビの世界が好きだし、合っていると分かったんです。芸人時代は知らなかった社会のルール、流れを理解できたのも本当によかった。私は失敗続きで迷惑を掛けたことも多かったけれども、周りの人がいるからこそ社会は成り立っている。当たり前のことですが、身をもって理解できましたし、周囲への感謝の気持ちがより大きくなりました。芸人時代は自分のパフォーマンスを発揮することが最優先でしたが、考え方が変わりましたね」
こうして野々村さんは、芸人時代の経歴を生かして放送作家に転身。あらためて「私の居場所はここしかない」と感じたと話す。
元芸人であることから、テレビ局の知り合いや親しい芸能関係者がいたため、新人作家としては早い段階でチャンスに恵まれた。しかし、その陰で「新人なのに野々村は企画書を見てもらえていいな」と周囲の新人作家からやっかみを受けることもあった。
「意地悪されたり嫌な思いをしたりしたことはなかったけれども、ちゃんと仕事で成果を出さなければ、と身を引き締めました。1回芸人を辞めているからこそ、今何とかしておかないと、自立した大人になれないと覚悟を決めたんです」
会社員時代の失敗を糧に、先輩作家に付いて積極的に教えを請い、気づけば順調に仕事をもらえるようになっていた。その後、仕事が安定してきたタイミングで、数年間交際していたお笑いコンビ2丁拳銃の川谷修士さんと結婚。楽しく結婚生活を送っていたが、子どもが生まれた頃、一度2人の関係を見直す出来事があったという。
下編 仕事と家庭のバランスが取れず夫にイライラに続く
取材・文/高橋奈巳(日経xwoman doors)写真/洞澤佐智子
■遠距離恋愛を実らせ28歳で結婚
■夫にイライラ、爆発よりも対話を選んだ
■「もう、あかん」と思ったら次のステージへ進むとき