商品は自信作、でもディレクターは向いていない

 「今振り返ると、20代は数えきれないぐらいの失敗をしてきました。当時は、失敗しても自分で認めたくなかったので、失敗とは思っていなかったのですが(笑)。その中で一番失敗したと思うのは、ブランドを始めたこと。お話をいただいたからと挑戦を決めたのですが、私は販売しかやったことがなかったので、毎日『向いていない』と思いながら仕事をしていました

 アパレル企業のオファーを受け、新たに自身のブランド「MOUSSY(マウジー)」を立ち上げ、代表に就任したものの、ものづくりは初めて。ブランドプロデュースのやり方が分からず、ビジネスの流れも分からない。今では数分で終わる仕事も、当時は何時間もかけて取り組んでいた。

 販売員時代は現場が好きで、店長になってほしいという打診があるたびに断り続けてきたため、マネジメントスキルがあったわけではない。ブランドに携わるチームをまとめるのもひと苦労だった。もともと洋服が好きでアパレル業界に進んだ森本さんだったが、「好きなことは趣味にしておけばよかった」と後悔する日々を送った。

「私じゃなくても、もっと才能のある人や流行を理解できる人はたくさんいるのに…と思っていました」
「私じゃなくても、もっと才能のある人や流行を理解できる人はたくさんいるのに…と思っていました」

 それでも辞めようと思わなかったのは、一度やり始めたことだったからだと森本さんは言う。

 「会社や周りの人の支えもあったし、今、投げ出したら一緒にやってきてくれたスタッフはどうなるのかといった思いがありました。初めてのことだらけで、スムーズにいかないこともあったけれども、商品には自信がありました。私が販売員になったのは、『こうしたらもっとオシャレに見えるよ』『こういう着方をすればスタイルが良く見える』とお客様に伝えたかったから。人をすてきに見せるのが好きなんです。そこで、販売員時代から思っていた『こうしたらいいのに』を、マウジーで形にしました」