何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで…「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、複数のレディースアパレルブランドを展開するARPEGE(アルページュ)代表、野口麻衣子さん(47歳)の失敗図鑑(上編)です。

(上)アルページュ社長 野口麻衣子 自己肯定感低過ぎた20代 ←今回はここ
(下)アルページュ社長 野口麻衣子 孤独と不安で産後うつ

「両親の会社を継ぐ」以外の選択肢は考えられなかった

 幅広い年齢層の女性から支持を集めている『Apuweiser-riche(以下、アプワイザー・リッシェ)』や『JUSGLITTY(以下、ジャスグリッティー)』などのレディースアパレルブランドを展開するARPEGE(以下、アルページュ)。ほどよくトレンドを取り入れながらも、女性の体を魅力的に見せる色やデザインが好評で、新作の一部は数日で完売してしまうことも多い。近年ではより大人世代が楽しめる『CADUNE(カデュネ)』を立ち上げるなど、成長を続けている。

 同社の代表を務める野口麻衣子さんは、42歳のときに両親から事業継承する形で社長に就任。幼少期から多忙を極める両親の背中を見て育ち、大学生になる頃には「いつか自分が会社を継ぐんだろう」と思っていたと話す。

 「両親からはストレートに会社を継いでほしいと言われたことはありません。でも、日常生活の中でなんとなく無言のプレッシャーは感じていました。本当は海外へ留学したかったけれども、あきらめざるを得ない状況でした。そんな環境だったので、私自身も他の仕事に就く選択は考えられなかったですし、特にやりたいこともなかった。大学卒業後、修業のつもりでアパレル企業に販売員として新卒入社し、1年後に辞めてアルページュに入りました。

 そのタイミングで23歳のときに大学時代から交際していた彼と結婚。公私ともに新しいスタートを切ったのですが、今思うと20代の私はとにかくとがっていて、そのまま突っ走ってしまっていたなと思います」

 当時のアルページュは社員が数十人の小規模な会社で、アパレル卸売業を主軸としていた。その中に「社長の娘」として入った野口さんは、周囲に気を使わせていると感じ、大きなプレッシャーを抱えるようになったと言う。