自信喪失になり「勘弁してください」

 えりすぐりのエリートが集まるマッキンゼーは、ほとんどの人がMBA(経営学修士)を持っている。MBAを持っていない人は、通称ミニMBAといわれる新人研修に参加することになっており、佐々木さんもその研修に参加した。

 研修地はヨーロッパで、期間は3週間。入社するやいなや現地に放り込まれ、各地から集まった参加者は欧米人が中心で約40人。自分と同じように大卒の学士号しかない人たちが集まるものだと思いきや、実は、全然違った。

 「MBAは持ってないけど、大学院卒の博士号は持っているとか、前職は医者や弁護士という、とんでもなく優秀な人たちばかり。そういうグローバルエリートたちに囲まれて、英語でビジネスのケーススタディーを学べ、と言われて気後れしないわけがなく……。

 しかも、日本人は私一人。同じアジアからは香港出身の人がいましたが、彼女はオックスフォード大の博士号を持っていて英語もネーティブ並みにペラペラ。本当にペラペラじゃないのは、私だけで。授業内容は辛うじてわかるけど、とにかくチームメートとの議論ができない。こんなの無理だって、半引きこもりになって、部屋でさめざめと泣いていました

「つら過ぎて、ごめんなさい、もう勘弁してください、という心境でした…」
「つら過ぎて、ごめんなさい、もう勘弁してください、という心境でした…」

 思いがけない「海外エリートたちの洗礼」を受けた佐々木さんは怖気づき、完全に自信を喪失した。失敗につきものの悔しさを覚える余地すらなく、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

 そこに救いの手を差し伸べてくれたのが、同じチームで元医師の米国人男性とスペイン出身の陽気な男性だった。スペイン人男性が少し日本語を話せたことから、ある日の夕食、いきなり日本語で話しかけられた。