脇目も振らず、執筆に集中した20代

 折原さんが20代の頃に担当していた連載は月刊漫画雑誌2冊、それに加え、読み切り漫画やイラストなど単発の仕事。さらに年間約4冊のペースで小説執筆の他、エッセーや児童書の執筆にも取り組み、20代はまさに「描き(書き)まくり」の日々だった。

 「漫画雑誌では月30~40ページ、読み切り漫画では60~100ページぐらい描くのがスタンダード。私は筆が早いほうなので、1本描き終えたら次というペースで進めていました。基本的にオファーを断ることはなかったですね。当時は完全に昼夜逆転の生活をしていて、深夜が執筆のコアタイムで睡眠は平均3~4時間ほど。でも、私の場合は体調を崩すことはありませんでした。だからどんどん仕事を受けても大丈夫! だと思っていたんですよね」

「読者さんから感想などをもらうと励みになりますし、うれしくなって、よし!もっと頑張ろうと思えるんです」
「読者さんから感想などをもらうと励みになりますし、うれしくなって、よし!もっと頑張ろうと思えるんです」

 漫画家デビューから2年後、他の作家による小説の挿絵を描いたことをきっかけに、小説も手掛けるようになり、早いときは2週間から1カ月で書籍1冊分を書き上げることも。仕事の合間に散歩したり、仲の良い編集者や友人と飲みに出かけたりするときもあったが、それ以外の時間はすべて執筆に費やした。リフレッシュといえば、年に1、2回出かける取材旅行ぐらいだった。

 商業漫画やティーンエージャー向け小説は特に作品の人気が重視されるため、競争が激しい世界。「私はまったく絵がうまいわけではない」と言う折原さんは、20代の頃は意図的に同業者と距離を置いていたと話す。

 「デビューしてからは、他の作家さんの作品は極力見ないようにしていました。皆さん、絵もストーリーもすばらしいので、自分と比べてしまって落ち込むだけですもの。そんな時間がなかったので、同業者の友達もつくらないようにしていました。それ以上に、自分の仕事に集中して周りが気にならない環境に自分を追い込むようにしていたところもあります」