何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで…「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、漫画『るり色プリンセス』『神様の言うとおり!』、小説『時の輝き』などで知られる少女漫画家、作家の折原みとさん(58歳)の失敗図鑑(下編)です。

(上)折原みと 仕事のし過ぎで創作意欲を失いかけた
(下)折原みと カフェ経営で失敗 やっぱり私は漫画家 ←今回はここ

充実の30代、40代ではまった大きな落とし穴

 少女漫画家・小説家として30年以上、第一線で活躍し続けている折原みとさん。仕事だけに没頭した20代を経て、33歳で湘南に移住、ライフスタイルを一新すると「人生がガラリと変わった」と話す。ずっとインドア生活を送っていた折原さんは、マリンスポーツや山暮らしなども楽しむようになり、すっかりアウトドア派に転向。仕事の量は抑えたものの意欲は変わらず、漫画や小説の執筆に取り組んだ。

 「20代は本当に仕事漬けだったので、ペースダウンしてインプットの時間を設けたいと思ったんです。執筆を通じて、勉強したいこともたくさん出てきましたし、やってみたいこともありました。幼い頃から大好きだった犬を迎えてからは、朝の散歩が習慣になり、昼夜逆転生活を改善できました。移住先の近所の方々も温かく受け入れてくれたので、私も人との交流を楽しむように。それまで話す相手はほとんど出版社の人だけだったので、事業家や専門職といった私の知らない世界で活躍している人たちや年上の方と話すのは新鮮で、学ぶこともたくさんありました。一気に視野が広がった感じです」

 こうして、やりたい仕事と望み通りのライフスタイルを手に入れた折原さんの30代は絶好調。心身ともに余裕ができ、スキューバダイビングや小型船舶操縦士の資格取得、日本舞踊や茶道など、さまざまなことに挑戦し、充実した時間を過ごしていた。しかし、40歳を迎えた頃、その行動力ゆえに慣れないカフェ経営を始め、つまずいてしまう

「東京に住んでいた頃はおしゃれしてハイヒールを履いて飲みに出かけることも息抜きでした。『都会の女』という気がして心地よいときもあったけれど、移住後は海の風を感じながら、Tシャツに短パンで過ごすほうが自分に合っていると思いました」
「東京に住んでいた頃はおしゃれしてハイヒールを履いて飲みに出かけることも息抜きでした。『都会の女』という気がして心地よいときもあったけれど、移住後は海の風を感じながら、Tシャツに短パンで過ごすほうが自分に合っていると思いました」