頑張り過ぎが20代最大の失敗

 「産む決意をしていたのに、赤ちゃんがいなくなってしまったショックで、しばらく働けなくなってしまいました。会社に休みや働き方を相談したけれど、制度上、融通がきかなかったんです。それまで私は社長になったつもりで働いてきて、死ぬほど頑張ってきた自負があるのに、あぁ、私は一社員でしかなかったんだ、と思い知らされました。

 自分で決めた道で、成果を出したいと一生懸命やってきた。盲目的といえるほど会社を信じていたけれど、半ば裏切られたような感覚にさえ陥ってしまいました。脇目も振らずに頑張り過ぎたことが一番の失敗だったのかもしれません」

 「辞めるなら今しかない」。しばらくの間、失意のどん底にいたものの退職を決める頃には、前向きな気持ちを取り戻しつつあった。

 「会社を辞めて自分と向き合う中、仕事以外にも生き方の選択肢はたくさんあるんだな、と気づきました。仕事しか見えてなかった自分の人生の解像度が上がった感覚がありましたね。でも、心の整理がつかず、このままだとダメになると思って、1カ月間オーストラリアへバックパッカーの旅に出発。そこで生きる人たちの姿を見て、これまでの仕事一辺倒だった人生観が変わりました」

「現地の人が『毎日サーフィンできるだけで幸せ』と話していて、そうだよね、頑張り過ぎなくてもいいんだよね、と思えました」
「現地の人が『毎日サーフィンできるだけで幸せ』と話していて、そうだよね、頑張り過ぎなくてもいいんだよね、と思えました」

 オーストラリアで山川さんが出会ったのは、好きなことを楽しみながら、肩の力を抜いて暮らす人々。彼らから「咲は笑顔がすてきだね」と言われるたびに、「このままの私でいいんだ」と自信が戻ってきた。

「これまで私は自分なりに努力してきたし、もっと自信を持ってもいいよね。日本では何かに失敗したとしても、すぐに飢え死にしないはず。じゃあ、自分で何でもできる、やるしかないじゃん!と思えたんです。仕事だけに偏らず、もっとフラットに、ニュートラルに自分の人生を生きよう、と」