撮影用の服が入らない モデルとしての挫折

 24歳のとき、仁香さんは6年間専属モデルを務めた『CanCam』を卒業。1年間の休暇を経て、26歳のときにアラサー世代のキャリア女性をターゲットにしたファッション誌でモデル業を再開した。

 しかし、実はこのとき仁香さんは、『CanCam』モデル時代よりも体重が13kg増えていた。休暇中に徐々に太り始め、気づいたら撮影で用意された服が入らないほどになっていた。

 「撮影用の服はだいたいS~Mサイズが多く、それらを着られないのはモデルにとって致命的。当時の私は海外のファストファッションブランドのXLサイズがちょうどいいぐらいでした。『ぽっちゃり』のイメージであればポジティブに生かせたかもしれませんが、私の場合は身長と骨格のせいで、がっちりした大きな人に見えてしまっていたんです。雑誌が提案する女性らしさが表現できず、だんだん撮影に呼ばれなくなっていきました

 焦りが募り、体形を戻すためにあらゆるダイエットを試してみたが一向に痩せる気配はない。食事の量もコントロールしていたが体重は減らず、来る日も来る日もダイエットのことばかり考えるようになっていた。とうとうモデルの仕事もほとんど入らなくなり、27歳から半分ニートのような状態で過ごした。

「実家が都内だったので、仕事が減ってもなんとか生活はできていました。当時の私の価値観は『痩せている=正しい』と思っていたので、大きなスランプに陥っていました」
「実家が都内だったので、仕事が減ってもなんとか生活はできていました。当時の私の価値観は『痩せている=正しい』と思っていたので、大きなスランプに陥っていました」

 2年たっても体重は変わらず、仕事をしない状況の仁香さんに対して両親からの風当たりはさらに強くなるばかり。29歳になっていた仁香さんは、ようやくモデル以外の仕事をする決心がついた。

 「当時はまだ、『20代で結婚するもの』という価値観が根強い頃でしたから、私の両親もことあるごとに『嫁に行け』『いつまでモデルなんてやっているんだ』『安定した仕事をしなさい』と言っていましたね。私自身も29歳で独身、半ニートは崖っぷちだと思い込み、焦るようになりました」