何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで…「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、スタートアップ企業の正社員、経済アナリスト、金融メディアでの業務と三足のわらじで活躍中の馬渕磨理子さん(38歳)の失敗図鑑(下編)です。

(上)馬渕磨理子 京大大学院修了後「就活全滅」で絶望
(下)馬渕磨理子 マネジメント挫折し得意分野に注力 ←今回はここ

スタートアップ企業の正社員、経済アナリスト、金融メディアでの業務と三足のわらじで活躍中の馬渕磨理子さん(38歳)
スタートアップ企業の正社員、経済アナリスト、金融メディアでの業務と三足のわらじで活躍中の馬渕磨理子さん(38歳)

のめり込んだトレーダー業務で陥った「意外な落とし穴」

 メディアでのコメンテーターやコラム執筆をはじめ、講演や書籍出版などマルチに活躍する馬渕さん。しかし、有名企業に的を絞った就職活動が全滅するなど、キャリアの始まりは順風満帆とはいえなかった。さらに、長年付き合ってきた相手との結婚が破談になるなど波瀾(はらん)万丈な20代後半を経て、馬渕さんは興味関心の赴くまま、仕事に注力するようになった。

 新卒で入社した医療法人ではトレーダー業務を担当することになった馬渕さん。学生時代の専攻とは関連のない業務だったが、勉強好きで、傾向と対策を練る真面目な性格とトレーダー業務は相性がよく、次第にのめり込んでいった。

 しかし、ここでも馬渕さんは壁にぶち当たる。毎日一人きりで黙々とパソコンに向かい、高いパフォーマンスを維持しなければならないトレーダー業務は、徐々に馬渕さんの心をむしばんでいった。

 「トレーダーという職業は、毎日目を皿のようにして値動きを眺めます。慣れてくるとトレーダー達の『損をしたくない』『勝ちたい』というさまざまな欲望が、マーケットの動きから見て取れるようになります。私自身も、人様のお金を預かっている責任を感じながらも、自分の本質を暴かれるような気持ちになりました。

 絶対に売るべきだと思われるタイミングで『もう少し待てばもっと高値で売れるかも……』というような考えが頭をよぎり、売れずに価格が急落したときには、罪悪感で押しつぶされそうになりました。これはもう、相場を通じて自分と向き合う訓練のようなもの。いかに平常心でいられるか、そして自分がどういった行動を取りやすいか、学生の時にできなかった自己分析をやり直しているような思いでした