何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで…「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、ヘアメイクアップアーティストのイガリシノブさん(42歳)の失敗図鑑(上編)です。

(上)人気ヘアメイク イガリシノブ よく遊びよく失敗の20代 ←今回はここ
(下)イガリシノブ 初著書で後悔&2度の離婚 学んだ40代

よく遊び、よく失敗した20代前半

 ファンデーションを塗り過ぎないナチュラルな肌に、ぽっとほおを染めたようなチークとつやのあるふっくらしたリップ、さりげなく目元の陰影を際立たせるアイメイク。この「イガリメイク」は、2015年に注目を集めて以来、時代に合った変化を遂げながら、幅広い年代の女性を中心に人気を博している。

 このメイクを考案したのが、ヘアメイクアップアーティストのイガリシノブさん。著書も多く、2018年にはドキュメンタリー番組「情熱大陸」に出演を果たした。現在も著名人のメイクを担当、ファッションやコスメ雑誌などを中心に大活躍中だが、「20代は自覚が足りず、たくさん失敗してきました。もう失敗だらけだったの」と話す。

 イガリさんは、高校卒業後、上京してバンタンデザイン研究所に入学したが、約半年で退学。トップヘアメイクアップアーティストが主宰するメイク専門のスクールに入り直し、メイクを中心に学んだ。その後、ロンドンへ留学。現地ではヘアメイクのアルバイトをしたり、さまざまなアートに触れたりして自由に過ごした。

 帰国後、イガリさんはヘアメイクなどのアルバイトをしながら、山野美容専門学校の夜間コースを卒業。ベテランヘアメイクアップアーティストのアシスタントに付き、研さんを積んだ。技術がものをいう世界のため、上下関係が厳しく、「立ち止まる余裕がなかった」と振り返る。

 「師匠の元では、物を1つ落としただけでも、すぐに新しいものを買いに走っていました。たとえ壊れていなくても、もちろんすべて自腹。今思えば、『道具を大切にしなさい』と教えてくれていたのだと理解できるのですが、当時はそれが分からず、モヤモヤするときもありました。師匠のいない現場で、先輩から明らかに理不尽な扱いを受けたこともありますね。

 現場続きで心身ともにフル回転していたので、3時間寝坊して大遅刻をしたこともありますし、撮影の途中なのにお手洗いで寝てしまったこともあります。やってしまったことに対して、時間は戻せないけれども、ひたすら反省しました」

 そんなとき、イガリさんは、仕事を通じてあるトップアーティストと出会う。それが今後の生き方を変えるきっかけとなった。

<イガリシノブさんの「失敗年表」>18歳 高校卒業後、上京/バンタンデザイン研究所入学/19歳 バンタンデザイン研究所を中途退学/ブライダルのアルバイトをしながらSASHUヘアメイクスクールでメイクを学ぶ/21歳 帰国/ブライダルやナイトワークの女性たちのヘアメイクのアルバイトを開始/24歳 ヘアメイクアップアーティストのアシスタントに/←(1)ここで失敗/25歳 ヘアメイクアップアーティストとして独立/多くの芸能人、著名人のヘアメイクを担当/雑誌や撮影現場で活躍の幅を広げる/36歳 初の著書「イガリメイク、しちゃう?」(宝島社)を発売/←(2)ここで失敗/第1子の産休に入る/39歳 TBS「情熱大陸」に出演/コスメブランド「WHOMEE」をスタート/41歳 コスメブランド「BABYMEE」をスタート/第2子出産