「イガリメイク」の原点

 多くの女性の心をつかんだ「イガリメイク」の原点は、かつてアシスタントやメイクを担当したAIさんと梨花さんの生き方にあるとイガリさんは話す。

 「私のメイクの原点は、AIさんの『みんなをハッピーにしよう』というマインド。そして、10年間メイクを担当していた梨花さんの生き方からもインスパイアされています。梨花さんは、美人でモデルらしい華やかなオーラがありますが、現場ではいつも明るく、気さくで失敗も笑いに変えてしまう。場を和ませる、とてもチャーミングな人です。

 きっと悩みやつらいこともあったと思いますが、人前では絶対ネガティブなところを見せないし、どんな時でも周りの人を思いやっていました。私はこうしたところをその人の『生きるセンス』と捉えています。『人をハッピーにできる人=生き方のセンスがいい』と感じ、自分も誰かを幸せにできるメイクをしていきたいと考えるようになりました」

 イガリさんがメイクを提案するときにモットーとしているのは「みんなをかわいく見せる」「みんなができる」の2つだと話す。

 「みんなが幸せな気持ちになれるメイクとは、どんなメイクなんだろうと考えたとき、プロやメイクマニアでなくても、簡単にできて、かわいくなれることじゃないかと思ったんです。美人を目指すのではなく、顔立ちや体形にかかわらず、誰もがチャーミングに見えるメイクを提案していこう、と」

 さまざまな媒体や撮影現場で活躍していた36歳のとき、これまでのメイク方法をまとめた初の著書「イガリメイク、しちゃう?」(宝島社)を発売。自分の仕事の集大成として出版したが、イガリさんは「今振り返ると、失敗だった」と話す。

「独立以来、メイクに関しては、プロとして失敗したことはないと言い切れます」
「独立以来、メイクに関しては、プロとして失敗したことはないと言い切れます」

 後編 イガリシノブ 初著書で後悔&2度の離婚 学んだ40代に続く

取材・文/高橋奈巳(日経xwoman doors) 写真/洞澤佐智子

下編「イガリシノブ 初著書で後悔&2度の離婚 学んだ40代」では、次のストーリーを展開

■一番の失敗は本を出してすぐに産休に入ったこと
■自分の正解を見つけてほしい
■2度の離婚で学んだこと
■20代、30代の女性に伝えたいこと