何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで……「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、ミドルシニアのキャリア支援を行う「ヒキダシ」を立ち上げ、昼スナック「ひきだし」のママとしても知られる、紫乃ママこと木下紫乃さん(52歳)の失敗図鑑(下編)です。
離婚2回、結婚3回で学んだ「結婚相手の条件」
キャリア軸ない「どこに出しても恥ずかしい人生」の強み ←今回はここ
働き方に悩むミドルシニアの背中を押す、ユニークなキャリア支援を行い、毎週木曜にだけオープンする昼スナック「ひきだし」のママとしても知られる木下紫乃さん。(上)では3回の結婚にまつわるエピソードを聞いたが、仕事ではどういう失敗があっただろうか。
新卒で入ったリクルートを退社した紫乃さんは、結婚してドイツへ。30代で無職で帰国した後、知り合いの紹介で広告代理店やIT系プロジェクトなどさまざまな仕事に就いた。
「私がラッキーだったのは困ったときに、聞きに行ける人が周りにたくさんいたこと。知り合いをたどって、臆面もなく『仕事ないですか』と聞きに行きました。キャリアの軸なんて発想がそもそもなかったから、当時はやれる仕事があれば何でもよかった。紹介されたら、『この仕事はできるかしら……』とか心配することもなく、未経験のIT系にも飛び込んでいました」
行き当たりばったりすぎる職務経歴
人生で初めて「職務履歴書」を書いて転職エージェントに登録したのは、36歳のとき。そこで初めてキャリアについて向きあうことになった。しかし、いざ職務経歴書を書こうとしても、30代でアルバイトや短期契約、さまざまな職種を転々としてきたことが並ぶと、何ができる人か分からない……。
「転職エージェントの人に会うまで、キャリアの柱なんてことを一度も考えたこともなかった。深く考えず、とにかく行き当たりばったりでやってきたことが、見える化してしまったんです」
「自分が大事にしたいことや、何を自分が軸にしたいか、仮説を持ってやっていればよかった……」。転職するにも、希望業種や職種も特になし。「なんのキャリアの軸もない自分は、まともな仕事には就けないだろう……」と諦めの気持ちもあった。
そんな紫乃さんの話を丁寧に聞いてくれたエージェントの女性はこう言った。