消去法で税理士になると決意

 「小学生時代から常に周りの評価を気にして生きてきた」と話す田村さんは、高校入学後に初めての挫折を経験。一時期は落ち込んだものの、「今置かれている環境下で、自分ができる最大限のことをしよう」と思い直した。

 「自分と向き合ったとき、私は、勉強においてはトップでないと自信喪失するタイプなんだと分かりました。でも、客観的に見たら、私はこの高校では『落ちこぼれ』でしかない。周囲は当然、国内トップの大学を目指していましたが、自分には現役合格は難しいと判断しました。そこで、できる範囲で頑張れば狙える指定校推薦枠を目指したんです」

 こうして、推薦で立教大学への進学をかなえたが、やりたいことや打ち込めるものに出合えないまま、就職活動の時期を迎えた。大学生になっても、「周囲からどう思われるか」が行動基準だったため、就活でもとりあえず大手企業に入りたいと思っていたが、ここでまた田村さんは大きな壁にぶつかる。

 ずっとコンプレックスを抱いていた自分の容姿が気になり、「容姿で面接に落とされるかも……」と受ける前から被害妄想にかられてしまった。

 「当時は『大手企業に入れないと格好悪い』という偏った考え方をしていたのですが、それならば、会社員ではなく、何か資格を取ってスペシャリストになれば誰からも何も言われないはず。周囲への体裁が保てる『それっぽい』、つまり、自分なりにちゃんと頑張っている人ですよという感じで、働ければいいと思ったんです。

 数ある国家資格の中から税理士を選んだのは、消去法でした。弁護士は難しい、簿記は取得している人が多いから差別化ができない……などと、一つひとつの可能性を考えていきました。最終的に税理士であれば、1科目ずつ取得できるし、時間をかければイケるかも! と判断。世間からの評価が割と高く、努力したら合格できそうな資格が税理士でした。高校時代の経験から、もう大きな挫折をしないように、少し背伸びすれば届きそうなことを目標にしたんです」

 税理士資格の取得を決めた田村さんは、立教大学卒業後、同大学院に進学。経済学を学びながら、順調に税理士試験に合格していった。24歳で大学院を修了する頃には、残り1科目となり、中堅の税理士法人に就職を決めた。

 満を持して、意気揚々と社会人生活をスタートさせた田村さんだったが、ここで再び大きな挫折を経験する。