「資格さえあれば…」は甘かった

 「当時は、資格さえあれば何とかなると思っていましたが、甘かった。職場では、当然パソコンスキルが求められましたし、教科書以上の勉強が山ほど必要。こんなにも自分は仕事ができないのかと、どんどん追い詰められていったんです。仕事以外にも、残り1科目の試験勉強もやらなければならないし、毎日の満員電車による通勤で心身ともに疲弊。

 1人になると毎日のように泣いていて、酒に溺れる日もあり、精神が不安定になってしまいました。仕事は続けるものだと考えていましたし、順調に資格も取得している自分なら、バリバリ仕事ができる人になれると思っていた分、つらかった。結局、在職中に残り1科目には合格したものの入社から1年10カ月で退職しました」

 その後、人生の迷子になった田村さんは、気分転換のため北海道へ一人旅に出発。約1カ月間、ユースホステルを転々としながら各地を回る中、思いがけない価値観と出合った

 バックパッカーが集うユースホステルでは、何かに失敗した人や諦めた人、目標の見つからない人など、自分と同じような経験をした人と触れ合う機会があり、他愛もない話をするうちに、新しい考え方に気づいたという。

 「旅先で出会った人たちは自分の『好き』を持ち、みんな楽しそうでした。周りの目なんて一切気にしていない。その方たちに自己紹介をすると、『まだ20代じゃないか』『税理士なんてすごい』と言ってくれて、自分の持っているものに目を向けることができました

 私はずっと、『人と同じレールの上を歩かないといけない』と考えていたのですが、レールの上を進んでいない人たちとたくさん出会ったことで、固定観念が薄れていったんです。北海道から戻った後、自分を見つめ直し、どういう生き方をしたいのかをじっくり考えました」

「私は、レールの上ではあるけれども、ちょっとみんなと違う方向へ進んだほうがいいのかも…と思い始めました」
「私は、レールの上ではあるけれども、ちょっとみんなと違う方向へ進んだほうがいいのかも…と思い始めました」