私は「他人軸」で生きていく

 約半年間の休養を経て、田村さんは、通勤しやすく、案件が多い都内の税理士法人や事務所より落ち着いて働ける地元の税理士事務所に再就職。

 価値観に変化があったとはいえ、やりたいことが見つかったわけではないため、頑張って取得した資格を生かして働き続けようと心に決めた。

 「自己分析を含めて、自分を棚卸しした結果、私はやっぱり『他人軸』で生きているんだと自覚。今まで、特別に好きなことや夢中になれるものはなかったし、他人から評価される自分を目指してきました。でも、明確にやりたいことがないし、周りの人と生きていかなければならないのだから、それでもいいんじゃないかと思ったんです。

 よく『自分軸を持とう』『自分軸が大事』と聞きますが、自分軸を持つのは意外と難しい。私のように、自分の軸となるものがどうしても見つからない、確立できない人だっているはず。だから、私個人は、自分軸がなくたっていいんじゃないかと思っています。自分のできること、今持っているものを生かして、社会の中で何かの役に立てればいいと考えています」

 こうして、再び働き始めたが、田村さんは、またも「仕事ができない」と自己嫌悪に陥り、悩み始めてしまった。

 「他人軸」のほうが生きやすいと考えていたが、その分、ミスを繰り返すたびに「周りに迷惑をかけているかもしれない」という不安に襲われた。しかし、前職での経験を思い出し、田村さんはある行動を起こす。

 後編 田村麻美 「子どもが小さいのに働くの?」にブチ切れたに続く

「再就職先の会計事務所で、やっぱり自分は仕事ができるほうではないと再認識した後、それでも仕事を続けるためにある戦略を取りました」
「再就職先の会計事務所で、やっぱり自分は仕事ができるほうではないと再認識した後、それでも仕事を続けるためにある戦略を取りました」
下編「田村麻美 『子どもが小さいのに働くの?』にブチ切れた」では、次のストーリーを展開

■「仕事ができない」自分が組織で生き残るための戦略
■組織に属さない働き方を模索、独立を決意
■「子どもが小さいのにかわいそう」にブチ切れ
■「それっぽい」自分から「ちゃんと頑張っている」自分へ
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人は自分以外の誰かに評価されて初めて対価というお金をいただける。だったら、周りの空気を読みまくって、自分にもできることで「仕事の武器」を増やしていけばいい。「実力がない」「やりたいことがない」…そんなあなたが幸せに仕事をしていくための超現実的なTO DO リスト

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取材・文/高橋奈巳(日経xwoman doors) 写真/洞澤佐智子