何かを成し遂げた女性は、華々しいキャリアで順風満帆に見える。でも実は、見えないだけで、思い通りにいかず悔しくて、泣いて、もがいて、落ち込んで……「失敗だらけの道」を歩んでいるのかも。先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、税理士で、『ブスのマーケティング戦略』(文響社/集英社文庫)、『「フツーな私」でも仕事ができるようになる34の方法』(日経BP)の著者、田村麻美さん(37歳)の失敗図鑑(下編)です。(doors特選シリーズ/2021年12月28日の記事を再公開します)

(上) 田村麻美 「他人軸」で「それっぽく」生きてもいいよね
(下)田村麻美 「子どもが小さいのに働くの?」にブチ切れた ←今回はここ

「仕事ができない」自分が組織で生き残るための戦略

 2018年に出版された書籍「ブスのマーケティング戦略」(文響社/集英社文庫)の著者で、現在税理士として活動する田村麻美さん。大学院卒業後、新卒で入った会計事務所で思うように仕事をこなせず、1年10カ月で退社、約半年間人生の迷子になったが、地元の税理士事務所に再就職を果たした。ところが、ここでも、与えられた仕事がうまくできない自分に落ち込んでしまった

 「前職では実務能力のなさにがく然として、自分を責め、職場でも暗いオーラを放っていました。そこで、同じ過ちを繰り返さないよう、考え方を変えたんです。私は結構、自分に甘いタイプ(笑)なので、我慢やつらいことが苦手。職場でつらくならないために、自分が変わろうと思いました。

 まず、資格があるとはいえ、先輩に比べて知識が乏しく、パソコンスキルも高くない私が、周囲に嫌われずに働き続けるにはどうすればいいかを考えました。そこで目標にしたのが、『職場の潤滑油になる』。常に笑顔を心がけ、話し掛けやすい人になって、積極的に人と関わると決めました。分からないことは早い段階で聞きに行ったり、細かい仕事を引き受けたりしました。飲み会にも積極的に参加。私は、仕事はできないかもしれないけれども、コミュニケーション能力を磨いて、人柄の良さで居場所をつくっていこうと考えました」

 いい意味で開き直り、自分なりの働き方を実践していた田村さん。会社ではかけがえのない存在になっていたはずだったが、それでも「このままでは、いつか組織に不要とされるかもしれない」という不安がぬぐえなかった。

 この不安が、田村さんを独立の道へと進ませることになる。