雇用形態でフレキシブルな働き方にも新風を吹かせたウーバーイーツ。その日本代表を務める武藤友木子さんが、「最高の失敗図鑑」に登場。グローバル・エリートの輝かしい経歴の中にあったのは、「血気盛んで、何でもうまくいくという勘違い」の失敗。それは30代前半まで、続いたという。世界を率いるトップリーダーならではの、仕事に対する考え方や取り組み方、そして生き方に学ぶ、武藤さんの失敗図鑑、後編です。

武藤友木子「あなたはリーダーじゃない」と部下の言葉
年を重ねて「何でもうまくいく」という勘違いが解けた ←今回はここ

 20代での起業、創業した会社の売却などを経て、2007年9月、33歳で、トラベルズー・ジャパンの代表取締役社長に就任した武藤友木子さん。

 20代からずっと、第一線で実績を出し続けていた。「自分に自信もあり、当時は、自分がやったほうが何でも仕事はうまくいくと勘違いしていた」。そんな武藤さんにとって、実質的に初めて経験するグローバルカンパニーで、初めて日本語が通じないシンガポール人の上司と仕事をした。コミュニケーションでは、食い違うことが多く、時には、体当たりで自分のやり方を押し通したこともある。

 でも、武藤さんはなぜ食い違うのか原因の追究はせず、ただただ、仕事で成果を上げることを優先していた。しかし、その後、「この意見の食い違いの根本的な原因となる文化の違いは、トラブルになりかねないことを学んだ」という。

グローバルなリーダーにどうしたらなれるのか

 グローバルなリーダーの一員になるには、グローバルなマネジメントができないといけない――そう感じていた武藤さんは、2010年から11年にかけて、トラベルズーに属しながら、世界トップクラスのマネジメントが学べるエクゼクティブMBA(EMBA)のプログラムに参加した。

 月に1回、自分が受けたいプログラムをやっている国に行って参加する。実際、武藤さんはニューヨークや香港、ロンドンなどに行き、それぞれ1週間滞在して朝9時から夜7時まで授業を受けて帰国する、という生活を20カ月続けた。そこで、グローバルな価値観の違いに衝撃を受けた。

「クリスマス返上で働かねば」に意外な反応

 エグゼクティブMBAのケーススタディで、ある事例が紹介された。スウェーデンのシステム会社が11月末の納期に間に合わず、12月上旬に納期を延ばしたものの間に合わず、さらに12月中旬に延ばしたが納期までに達成できず。契約上、年内に納品しないと違約金が発生する状況で、それを回避するにはクリスマス休暇をつぶしてエンジニアが働くしかないというケースだ。

 自分がリーダーならどうするか。日本人の武藤さんは、自分たちのミスで遅れているなら、クリスマスであろうと休暇を返上して働くのが当然と考えた。

 だが、なんと、北欧系出身のグローバルリーダーたちは、「北欧でクリスマスに働くなんてあり得ない」と口をそろえたのだ。

「やらないわけないよね……って思いますよね。でも、そう思ったのは私だけだったんです」
「やらないわけないよね……って思いますよね。でも、そう思ったのは私だけだったんです」
<武藤友木子さんの失敗年表>24歳 国際基督教⼤学を卒業し、現アクセンチュアに入社/26歳 Co-Founderとして起業(取締役マーケティング担当)/★ここで失敗1/   会社を楽天へ売却し、自身も楽天へ転籍/27歳 事業部長に。不調の事業部や会社再建を担う/29歳 横浜国立大学非常勤講師に/32歳 結婚/33歳 日本初進出のトラベルズー・ジャパン社長に就任/36歳 EMBAでMBAを取得/★ここで失敗2/39歳 オープンテーブル社長就任/42歳 第1子出産/   グーグルの新規顧客開発日本代表に就任/44歳 ウーバーイーツ日本代表に