28歳でマサチューセッツ工科大学(MIT)の助教、32歳で東京大学特任准教授、33歳で東京芸術大学デザイン科准教授に就任……とキラッキラな人生を歩んでいるかに見える、アーティストのスプツニ子!さん。「20~30代の働く女性同士、共有したいことがいっぱいある!」とのこと。さあ、スプツニ子!さんのお部屋へようこそ。ゆっくりお話ししましょ。

米国政府がトップに女性を数多く起用したのは自然な流れ

 アメリカではジョー・バイデン氏が大統領になり、副大統領にカマラ・ハリス氏が就任しました。広報チームは7人全員が女性。財務長官にも女性が登用されました。これはアメリカにとってすごく自然な流れで、とても民主党らしいなと感じています。

 今のアメリカは、これまでのシステムに対する反動がかなり出てきています。皆さんは、「Systemic Racism(制度的人種差別)」という言葉を知っていますか? これは「Black Lives Matter(アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけにアメリカで始まった、人種差別抗議運動のこと)」の議論が盛り上がった頃からよく使われ始めました。

「システムによる差別」への反発

 社会を構成する一人ひとりに「人種差別」をする気がなくても、経済や政治のシステム全体の在り方が原因で、白人以外のコミュニティにとって不利な状況になってしまう。それがSystemic Racismです。

 数十年前、Racism(人種差別)というと、個人が誰かに悪態をついたり、差別的な発言をしたりするといった一人ひとりの行動や考え方が大きく問題になっていましたが、今は「システムによる差別」も問題視されるようになっています。

 YouTube上の動画「Systemic Racism Explained」では、アメリカにおける人種差別が分かりやすく解説されています。アメリカには「黒人が多く住む地域」「白人が多く住む地域」があります。そして、住んでいる地域によって銀行でのローンの借りやすさも違います。貸す側が「人種差別をしていない」と言っても、黒人のほうがローンを借りづらいという事実はあります。また、黒人が多く住む地域の学校は相対的に施設や教員の予算が少なく、質の高い教育を受けづらいという傾向もあります。

 社会の構成員一人ひとりに人種差別の意識がなくても、社会構造という原因により、黒人はお金を借りにくく、いい教育を受けにくく、「格差のスパイラル」から抜け出せなくなりがちなのです。

 私は、これと同じことがジェンダーの分野でも起きていると思います。それが、「Structural Sexism(構造的性差別)」と呼ばれる考え方です。