マイノリティーはソーシャルメディアの出現で変わった

 これまで、エリートたちがCNNやBBCなどの主流メディアを通じて報じてきた価値観に対して、反エリートたちは怒りやいら立ちを覚えてきたところがあると思うんです。ソーシャルメディア誕生以降、そんな反エリートたちの声が聞こえてくるようになりました。反エリートたちが連帯し始めて、彼ら彼女らが見たいニュース、聞きたいニュースが作られるようになったわけです。

 例えば、リベラル思想を持つエリートは「移民に優しく」「違った価値観を受け入れよう」というメッセージを主流メディアを通して発信してきました(そしてそれ自体は、道徳的に、とても大事なメッセージだと思います)。

 ですが、グローバル経済が移民の恩恵を受ける反面、労働者階級の多くは移民のせいで仕事が奪われるわ、慣れない宗教を持つ人が隣に引っ越してくるわ、これまで敬虔(けいけん)なキリスト教徒として禁じていた同性愛を受容するように言われるわと、彼ら彼女らの目線からすれば困難な目に遭っていたりします。

 グローバル経済の恩恵は受けていないのに、エリートに「移民を受け入れましょう」「違った価値観を受け入れましょう」と諭されたら、どれだけ道徳を説かれても、直感的に怒る人が出てくるんだろうなと思うんです。その怒りをソーシャルメディアで連帯した結果が、トランプ現象やブレグジット(イギリスが欧州連合から離脱すること)だと私は解釈しています。

 最近のフェミニズム現象も、思想は全く違えど、近いパワーバランスが働いているのかなと思います。これまで、ビジネスエリートの世界から、女性は排他されてきましたよね。特に日本のテレビなどの主要メディアで働く人は男性がほとんどだったから、自然とニュースやテレビ番組は男性目線になってしまう。

 だから、女性が性の対象としてバカにされた目線で描かれたり(1990年代は「30秒以内にアイドルが水着に生着替え!」みたいな番組、昼から流れてましたよね)女性が若いことだけが価値のように描かれたり(バラエティ番組の還暦近い男性司会者が、30代女性を「おばさん」呼ばわりしてスタッフと笑っていたり)女性をバカにするような番組や広告を私たちは毎日バンバン流されて、個々にモヤモヤを抱えていたのに、どんなに女性が個々に声を上げてもメディアに取り上げられることがなかったんです。

 でも、そんな女性たちがソーシャルメディアを手にして、状況は一変しました。