新プロジェクトは私にとっての「社会彫刻」

 私は今、生殖医療に関連する新しいプロジェクトの準備を始めています

 このプロジェクトは、私にとって、アーティストとしての新しいアプローチ方法でもあります。これまでアーティストとして、アート作品を通して社会に問題提起をしてきました。美術館で作品を発表して、大きいプロジェクトもどんどんやって。でも、いかんせん私は過去の成功のパターンをなぞるだけでは満足しないタイプなんです。性格上どうしても、難しくて未知な方向へ行きたくなってしまう。

 アメリカで同僚やアーティストを見て、一番格好いいと思ったのは成功のパターンをなぞるだけではなく、新しい考え方や動き方を作っていける人。結局、そういう人が一番面白いなって思います。科学でもアートでも、分野全体の考え方ややり方を更新できる人が一番格好いい。アート作品を美術館で発表するというのは、アートの一つの表現方法。でも、新しいやり方があるんじゃないのかなと思って。

 私は私なりにアートの手法を拡張しているつもりです。現代アートのヨセフ・ボイス(ヨーゼフ・ボイス)というアーティストは「社会彫刻」という言葉を使いました。彼はいろいろな人が関わっていくアートを作ったことで有名で、物だけではなく、社会を彫刻する、という意味合いでこの言葉を使っていたんです。

 この生殖医療に関する新プロジェクトは、私にとっての社会彫刻。困難も多いかもしれないですが、社会に変革を起こしたいという気持ちでいます(そして準備段階なのであまり具体的に話すことができなくてごめんなさい)

 自分で体感した違和感って貴重だと思うんです。日本とイギリスで育ち、テクノロジーに関わる女性として、アジアとヨーロッパを見て、31歳でキャリア、家族、妊娠・出産で悩んだときに、ちょうど卵子凍結などの新しい技術が世界に浸透し始めた。

 ちなみに、未婚女性の卵子凍結は、日本で2013年に承認されてまだ6年目です。今の感覚は、インターネットの黎明(れいめい)期に似ているように感じています。