28歳で米マサチューセッツ工科大学(MIT)の助教、32歳で東京大学特任准教授、33歳で東京芸術大学デザイン科准教授に就任……とキラッキラな人生を歩んでいるかに見える、アーティストのスプツニ子!さん。「20~30代の働く女性同士、共有したいことがいっぱいある!」とのこと。11月30日に開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2019 Winter」のセッションでも、スプツニ子!さんの赤裸々トークに会場が沸きました。さあ、スプツニ子!さんのお部屋へようこそ。ゆっくりお話ししましょ。

卵子凍結、選択的シングルマザーに出会って開眼

「早速、卵子凍結を実践中。この1年で26個を保管できています」(スプツニ子!さん)
「早速、卵子凍結を実践中。この1年で26個を保管できています」(スプツニ子!さん)

卵子凍結、してみようかな

 前回「スプツニ子! 仕事? 子ども? 悩む『32歳あるある』」のどん底話の真っ最中、私の中でどんどん大きくなっていたキーワードがありました。それは、「卵子凍結」

 アメリカではAppleやFacebookなどのシリコンバレー企業が、2014年に女性社員の卵子凍結に補助金を出す福利厚生制度を開始したことがニュースになり、私が教えていたMITの学生たちともその話で盛り上がっていました。2013年から日本でも認められるようになっていた未婚女性の卵子凍結を、私の周りでも、同年代の友達がちょこちょこやり始めたんです。それに影響されて「私もやろうかな」と思い立ち、早速カウンセリングを受けに行ってみました。

 そこに転機となる出会いが私を待っていました! その相手はカウンセリングに現れた知的で美しい先生。

 「卵子凍結に興味があります。今は別にパートナーもいないし、子どもも今すぐ欲しいわけじゃないけど、いつか欲しいという気もします」と私が素直な気持ちを打ち明けると、「凍結にベストなタイミングは35歳以下。あなたは今33歳だからすごくいいタイミングで来てくれました。いい卵子が採れると思いますよ」と、卵子の話をパーッとしてくれたんです。データを見せてくれながら、早ければ早いほうがいいですよ、って。

 彼女は選択的シングルマザーでした。あえて結婚をせずに2人の子どもを育てている。特定の男性と結婚して同居するのではなく、彼氏はいても結婚や同居はしない。「女の人でも仕事があれば自分で生きていけるのだから、子どもが欲しいからといってわざわざ結婚する必要はないんです」と話してくれました。

 それを聞いて、私は「そうだよね」と心底納得しました。子どもって「結婚」という儀式を通さなくてもつくれるのに、社会的に、なぜか結婚しないと家族をつくっちゃいけないように思わされていたわけで。こんなに未来志向の私でさえそう思っていたようなところがあったのだから、そうでない人たちはもっとそんな思い込みに縛られているのかも。ヨーロッパやアメリカでは、精子バンクの精子でたくさんの子どもたちが生まれていて、充実した保育園やシェアハウスなどの社会的支援に支えられながら、すくすくと育っているというのに。

 「女の人には自分で子どもを産んで自らの家族を持つ自由があるのに、まるで結婚や戸籍を通さないとその力を駆使できないかのように暗示を掛けられてきたんじゃないか」って、その瞬間私ははたと気づきました。