「子ども欲しくないの?」「子どもを産まない人生なんて私には無理」など周囲からの言葉にモヤモヤしたことはありませんか? 精神科医の片田珠美さんにそのような発言をする人の心理や上手な言い返し方を聞きました。自身も「子どもがいないからそんなに働ける。男と変わらない」と言われた経験があるそうです。

前編 「なんで子ども欲しくないの?」発言する人の心理とは ←今回はここ
後編  子どもがいない疎外感やコンプレックスとの向き合い方

片田珠美
片田珠美
広島県出身。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。京都大学非常勤講師(2003年~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。最新の著書に『他人をコントロールせずにはいられない人』(朝日新書)がある

自分の優位性を示したい

編集部(以下、――) 子どもがいない人に対して、「なんで子どもをつくらないの?」と聞いたり、「子どもってかわいいよ? 産めば分かるよ」「子どものいない人生なんて私には無理だな~」などとマウントを取るような発言をしたりする人に出会うこともあります。こういう人たちはどういった心理なのでしょうか?

片田珠美さん(以下、片田) いくつかのパターンが考えられます。まず、子どものいる人がそうしたことを言う場合、相手よりも一段高いところに自分を置くことで優位性を示したいという心理の表れなんです。いわゆる「マウンティング女子」です。やたらと序列を付けたがる人は、自己愛が強く、自分の存在を認めさせたいという承認欲求が非常に強い傾向があります。

想像力が欠けている

 もう一つは、「想像力が欠如」しているケースです。自分の発言によって、相手がどれだけ傷ついたり、自信をなくしたりするかということに想像力が及ばない。本人からすれば、悪意がなく、むしろ心配しているつもりだったり、親しみを込めたコミュニケーションだったりするのですが、デリカシーがなく無神経なので、人を傷つけることを平気で言ってしまう。年配の男性にもこうした人は結構いますね。