「日経WOMAN」が、この1年に各界で最も活躍した働く女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」。大賞に選ばれたのは、「北欧、暮らしの道具店」の店長であり、運営するクラシコムの取締役・佐藤友子さんです。2022年8月には東証グロース市場に上場を果たしています。いかにして独自の世界観をつくりあげ、熱いファンを増やしてきたのか、佐藤さんの人生と仕事との向き合い方について聞きました。
18歳から10年以上の自分探し 自分を責めていた
編集部(以下、略) 佐藤さんが店長を務める「北欧、暮らしの道具店」は、食器やインテリア雑貨、アパレル、コスメなどを取り扱うオンラインストアとして、熱いファンが多いことで知られています。昔からインテリアや雑貨に興味があったのですか?
佐藤友子さん(以下、佐藤) 暮らし周りへの興味は、子どものころの母の姿が原点です。家の中をちょっとしたもので飾ることが好きな母で、体が弱くて寝込むこともあったのですが、鉢植えを買うときなどは本当に楽しそうで。その姿を見ると私もとてもうれしかったんです。日常のささいなことを大切にして、自分らしく楽しむことってすてきなことで、こんなに人の心持ちを楽しく豊かにするんだという思いがあって。暮らしのディテールに対して何かささやかでも影響を及ぼせるような仕事に就きたいっていう漠然とした目標だけがありました。
ただ、「北欧、暮らしの道具店」に行き着くまでは、何をやっても続かない自分を否定してばかりいました。父親の転勤先の広島で高校を卒業し、進路を決めないまま親の転勤について関東に戻ったのですが、アルバイトや契約社員として職を転々としていました。
ファミリーレストランでアルバイトをしたり、リサーチ会社で電話オペレーターの契約社員として働いたり、リフレクソロジーサロンを開業したこともありました。予約客で予定がびっしり埋まるぐらいに成功しかけても、体調を崩してしまい廃業に。バンド活動を一緒にしていた兄と起業しカフェ事業を試み、開業前にたち消えになったこともありました。何をやっても続かなかったのです。
―― そんな佐藤さんの転機はなんだったのでしょう?
佐藤 30代を前にして今までのキャリアを振り返ったとき、「これまでは失敗を恐れ、勝負することができなかったけれど、このままではダメだ」と思いました。好きのど真ん中に本気で向き合おうと決意したのです。
一念発起して応募したのが、インテリアデザイン事務所。未経験なので、インテリアに詳しいこと、大好きなことをアピールできるよう、自宅の写真を撮影してアルバムを作成し、面接に持っていきました。必死でしたね。熱意が伝わって「採用」をいただいたときは、帰り道で思わずジャンプしたくらい、うれしかったです(笑)。入社後は営業をしながら少しずつ現場に行かせてもらい、インテリアコーディネートの仕事を覚えていきました。