日本では社会的適応による卵子凍結について法律や政府指針などはなく、日本生殖医学会のガイドラインが主たる基準となっている。しかし、所変われば事情は変わる。「アメリカは無法地帯、イギリスでは法的規制をしつつも認められ、フランスでは社会的適応による卵子凍結の禁止を解禁するか議論がなされている最中だ」。専門家から詳しく話を聞いた。

卵子凍結をしたいか…、「分からない」が約4割

 本連載の前回記事「卵子凍結『興味あり』は7割、『将来やりたい』は6割」で紹介した、日経doors実施のアンケートによると、「将来、卵子凍結をしたいか」という質問に対し、約6割が「してみたい」と回答している。「卵子凍結に興味がある」、「卵子凍結をしてみたい」と回答した人の年齢を見ると、ともに30~34歳が最も多い。

 一方で、「卵子凍結をしたいか」という質問に対して、「分からない」と回答した人も約4割いる。自由回答では「検討中でいろいろ調べてみたが、費用面と母体へのリスクが心配(30~34歳)」「凍結した卵子を利用して健全な子どもが生まれるかどうかが気になる(30~34歳)」という不安な気持ちが寄せられた。

 著者が以前に取材した不妊治療専門医の印象的な言葉がある。「私たち(不妊治療専門医)は、卵子と精子で子どもを『つくって』います。私たちの仕事のこの部分だけ切り取ると、製造業に近いと言っても過言ではありません。ただし、私たちが『つくって』いるのは、人間の命。自分の医療行為が倫理にかなっているかどうかという視点を、忘れないよう常に肝に銘じています」

卵子凍結は国によって方針が異なる

 日本生命倫理学会の理事を務める、東京大学医科学研究所・生命倫理研究分野・准教授の神里彩子さんに卵子凍結に関する考えを聞いた。神里さんは言う。「最近、卵子凍結が注目を浴びるようになってきましたが、この卵子凍結は国によってかなり考え方や方針にバラツキがあることを私たちは知っておかなければいけません」