40歳を超えて元気な人こそが危ない

 妊婦が高齢の場合、分娩時の出血量が増える可能性がある。血管や筋肉が加齢のために弱まり、分娩時の出血が止まりにくく、止血のために子宮を全摘する場合もある。また、胎盤が早期剝離した場合、赤ちゃんが生まれてくるより先に胎盤が先に剝がれ、結果、赤ちゃんが亡くなることもある

 前置胎盤の可能性も上がる。これは通常、子宮の上側に形成される胎盤が、赤ちゃんの出口を塞ぐような場所に形成されてしまうケースだ。この場合、赤ちゃんを帝王切開で出す必要がある。このとき、胎盤が子宮に癒着してしまっていると、出産による大量出血で母体が危険にさらされる可能性がある。

 「現在、40歳を超えてもなお、外見は若々しくはつらつとしている人が増えています。しかし、体は年齢相応に衰えている。このように見た目とのギャップがあるため、本人や周りは高齢出産のリスクを自覚しづらいかもしれません。でも、冷静に現実を直視する必要があります」

卵子1個当たりの妊娠率は4.5~13%

 若い女性の卵子凍結についての考えを聞いた。

 「仕事におけるキャリア構築を念頭に置き、若いうちに卵子を凍結しておくことに関しては問題ないと思います。ただし卵子1個当たりの妊娠率は4.5~13%と決して高くないため、卵巣刺激を行い、1度の採卵でできるだけ多くの卵子を得る必要がありますし、その後の凍結や融解のプロセスでは、専門の技術職である培養士の技術や培養室の環境によって、融解後の卵子の生存率やその後の顕微授精の受精率などが全く違ってきます

 そうした点をしっかり理解して、自分に合う医療機関を探す必要があります。実際に当院にも『すぐにでも卵子凍結をしたい』と来院される方がいらっしゃいますが、必ずセミナーなどに参加して、こうした正しい知識を持っていただくことから始めています」