理想は、20代での自然妊娠・分娩

 ちなみに、未受精卵子凍結を行う理由は大きく分けて2種類ある。1つは「医学的適応」によるもの。もう1つは「社会的適応」によるものだ。医学的適応とは、主にがんや白血病などの悪性腫瘍の治療の過程で、薬の副作用により将来の妊孕(にんよう)力(妊娠する力)が損なわれる危険がある場合に、前もって卵子を凍結しておくこと。一方、社会的適応とは、健康な人が将来の妊娠に備えて卵子を凍結しておくことを指す。

 「最も理想的なのは、日本産科婦人科学会が推奨している通り、20代で自然妊娠、自然分娩すること」と京野氏は言う。しかし、そうも言っていられない状況にある人もいるだろう。事実、2013年に日本生殖医学会が「社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン」を発表してからは、社会的適応による卵子凍結の施術を受けたいという女性からの問い合わせが増えているそうだ。

 「今となっては驚くべきことですが、1925年では日本国内で45歳以上の女性2万人以上が出産していました。これが2015年では1308人にまで減っています。昔の女性は若い頃から妊娠と出産を繰り返し、妊娠中は排卵がなく、ある意味で卵巣を休ませることができていたため、高齢出産も可能だったのでしょう」

 さて、次回は、38歳で2回、39歳で1回、合計3回の卵子凍結を行った武田さやかさん(仮名・42歳)のインタビューを紹介する。

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取材・文/小田舞子(日経doors編集部) 写真/PIXTA