「ずっと子どもが欲しかった。結婚もしたかった。でも、うまくいかなかった」。そう振り返るのは現在42歳の武田さやかさん(仮名)。武田さんに卵子を凍結しようと思った経緯や、その後の悩みについて聞いた(取材は2019年10月に実施)。

38歳で、結婚を考えていた彼との別れ

 「38歳のとき、『この人と結婚したい』と思いながらお付き合いしていた男性と別れてしまったんです」。そう語るのは会社員の武田さやかさん(42歳)。「子どもはずっと欲しかったし、結婚もしたかった。でも、いろいろあって機会に恵まれなくて。そうこうするうちに『卵子の老化』という言葉を知りました」。その頃、たまたま乗った電車の吊り広告で、不妊治療クリニックが開催する卵子凍結セミナーの情報を目にした。

 「行くだけ行ってみようかな」

 セミナー当日。まず医師から卵子凍結に関する詳細な説明を受け、後半はお茶会のような雰囲気で会が進行された。「女性2人と同じテーブルになりました。私を含め、38歳が2人、もう1人は39歳でした。恐らく参加者の多くは年齢が近かったのだと思います。その場でLINE交換をして、以後、この3人で卵子凍結に関する情報をシェアするようになりました」

AMHが55歳以上に相当する値だった

 その後、武田さんはそのクリニックでブライダルチェックを受けることにした。卵巣内に卵子がどれだけ残っているかを測る、AMH(アンチミューラリアンホルモン)値の測定結果を見て驚愕(きょうがく)した。「AMHが異常に低かったんです。グラフを見ると、既に55歳以上に相当する値でショックでした。この結果を見て、絶対に卵子凍結をしようと決めました。凍結卵子を使った体外受精の成功率は約10%と聞いていたので、できれば20個、少なくとも10個は取っておきたいと考えました」