ユニークなキャリアで輝く人に、お金と人生、お金と仕事について聞くこの連載。人生の転機で手にしたお金や投資が、その後のキャリアにどう関わっていったのか、迫ります。今回登場してもらったのは、「孤独を解消する」ことを目的に事業を展開するオリィ研究所の代表・吉藤健太朗さん。分身ロボット「OriHime」などでコミュニケーションの障害に挑む吉藤さんに、お金との向き合い方を聞きました。後半は会社設立後、どう事業を運営されたかを中心に教えてもらいました。
お金とキャリアにまつわるエピソードを紹介するこの連載。オリィ研究所の代表・吉藤健太朗さんに、会社設立までを語ってもらった前編に続いて、後編では、お金に対するユニークな考え方や、お金を使う目的について詳しく聞きました。
2000万円の出資を目指して挑んだビジネスコンテスト
――この連載ではお金とキャリアにまつわるエピソードをお伺いしています。前編のオリィ研究所・吉藤健太朗 35歳まで貯蓄ゼロ計画継続中は会社設立までを伺いました。後編は会社を始めてからのことを伺います。設立後1年半は利益がなかったそうですが、その状況を変えたきっかけは何でしたか?
吉藤 2014年に、若手起業家を対象にしたビジネスコンテスト「みんなの夢AWARD」に出場しました。500ぐらいのエントリーがあるんですが、ファイナリスト7人に残ると日本武道館の壇上で1万人ぐらいの前でプレゼンができて、優勝すると2000万円を5年間、出資してもらえるんです。そこで、2足歩行のOriHimeを使って、1万人の前で、ALSの患者さんが目だけで操って歩き回らせるというデモをやったら、絶対に優勝できると確信したんです。
「会社の資金調達につながったロボット開発費」
ポケットマネーだったので1万円も無駄にはできず
まずは1万円で買える材料を揃え、研究をスタートさせた
最終的には総額60万円かかった
――そのコンテストに出るために、準備の費用がかかりますよね。それはどう用意したんですか?
吉藤 ロボットの開発費を会社から出してほしいと副社長の結城(明姫)とCTOの椎葉(嘉文)に言ったら、「そのコンテストに出たところで、勝てる見込みは何パーセントあるの?」と断られたので、自分のお金を60万円使ったんです。そうしたら、私の預金額は4000円になりました(笑)。
――ロボットは、吉藤さんひとりで作ったんですか?
吉藤 インターンシップの学生ふたりに来てもらい、正月の間に作りました。結城と椎葉には内緒で申し込んだんですが、ファイナリストに残り、優勝することができたんです。2000万円を借りることができて、結城と椎葉にも給料を払えるようになり、オフィスも構えて、社員を雇えるようになりました。
――60万円を自分で出さなければ、その状態から脱出できなかったかもしれないですね。
吉藤 そうです。でも、もし60万円を会社から出していたら、変なプレッシャーを感じてしまっていいものが作れなかったかもしれないし、自分のお金を突っ込んだからこそ頑張れたのかもしれないです。人生で最大レベルに本気を出せました。それまでは形だけの会社でしたけど、2014年の4月から、ちゃんとスタートを切ることができましたね。借りた2000万円は5年経って返済しました。