手紙を書くことが心の支えに

山田 1日1通、手紙を書くことにしたんです。「私の夢は『ファクトリエ』を有名にすることではありません。値段ではなく、作り手の思いに共感して洋服を買うという考え方をメジャーにしたいのです」といった内容で、協力してほしい工場の方やアパレル業界の方にも送りました。結局合計1000通くらい書きました。起業したばかりで何の取り柄もなかった僕にとっては、「毎日手紙を書く」という自分で決めた行動の継続が、大きな心の支えになったんです

――メールではなく、手紙という手段を選んだのはなぜなのでしょうか。

山田 僕は作り手の思いで洋服を買う時代が来たらいいなと思っていますし、こういう考え方をメジャーにしたいし必ずメジャーになると信じています。それを伝えた人と僕との出会い方を話すときに手紙がいいかなと。それに手紙って全国どこから送っても1枚80円で届く。これはすごいなと改めて思いました。

「毎日1通手紙を書いて自分の思いを伝えました。手紙を書くことが精神的な支えになりました」
「毎日1通手紙を書いて自分の思いを伝えました。手紙を書くことが精神的な支えになりました」

――手紙によって事業は少しずつ広まっていったのですか?

山田 いや、まったく。こういう言い方をすると手紙を返してくれた人に怒られるんですけど、返信が来ると、絶対に無理だと思っていた懸賞が当たった気分になるほど。それで封を開けるとだいたいお断り。「返さなくてよくない!?」って思ったことも。そんなことばっかりでした。

――それでも諦めずに協力してくれる工場を探されたんですよね。

山田 そうですね。協力してくれる工場を探して歩き回っていたら、「あやしいスーツの男性が歩き回っているから注意してください」と町内放送をされてしまったことも。最初は自分のことだと気がつかなくて「怖いな」と思っていたら自分だったとか

――そんなこともあったのですね! 心が折れませんでしたか?