作ったシャツを「行商」して回った

山田 折れましたよ。あまりにも協力してくれる工場が見つからなくて「もういいよ、諦めようか」と考えながら新宿行きの夜行バスに乗りました。ただバスに揺られながら考え続けて気づいたのは「これは自分がやりたくてやっているんだ」ということでした。だから人がどう思おうと、何を言おうと自分がやりたいからやっている。それならやり通すしかないと。そこから気持ちが変わって、前向きに進めました。

 それでもやっぱり事業がなかなか軌道に乗らなくて。最初に作ったシャツ400枚は一気に売ろうと思って、タクシー会社に制服にしてもらおうと営業に行ったのですが、全然先方が要求する値段と合わない。ホテルにも売り込みましたが、そこはもう他社との付き合いがあるという。一網打尽作戦は難しいと思ったので、「行商」もしました。シャツをトランクにつめて、公園に行き「シャツ、買いませんか?」と尋ね歩いたことも。一気に周囲には誰もいなくなりました(笑)。

寝る前に3つよかったことを考える

――まさに波瀾(はらん)万丈ですね。

山田 つらくなったときは、寝る前に今日よかったことを3つ自分に言い聞かせるようにしています。これをすると、どんなにつらい1日でも今日こんなことがあったんだって思えます。例えば中学生が挨拶してくれたとか、定食屋のおばちゃんがサービスでおまけを付けてくれたとか、いつもよりご飯が多い気がするとか、それくらいささいなことしか見つからないときもある。そういうことを1日3個必ず言うと、幸せな気持ちで寝られるようになります。

 それに、「幸せはすでに自分の周りにある」と考えるようにしています。お金をかけて新しいことを始めると、人はたいてい元を取ろうとしてしまいます。けれど実際は、期待はずれな結果になってしまうことも多い。でも何気ない日常生活を送れている今、僕たちはすでに幸せの渦中にあるということです。うまくいかなくても、元が取れなくても、自分は幸せ。そう思っていたからこそ、1000通の手紙から生まれた細い糸のようなつながりを、太い絆に変えていけたのだと思っています

――元を取れなくても、何気ない日常が送れている今、すでに幸せの渦中にある。まさにおっしゃる通りですね。そんなお考えの山田さんのお金の使い方に関するルールがあったら教えてください。

「僕たちはすでに幸せの渦中にある。うまくいかなくても、元が取れなくても幸せだと思います」
「僕たちはすでに幸せの渦中にある。うまくいかなくても、元が取れなくても幸せだと思います」