お金より時間に価値がある

山田 大前提として、僕は給与が全然高くない。うちの会社のなかでも高いほうではない。そもそもあまりお金に興味がない。お金を使うよりは、時間を使うほうが価値があると思っているから、答えるのが難しいですね。

 一番お金を使うのは洋服かなと思います。服はファクトリエで買っています。そう聞くと、「社長なのだから買うのは当然だ」と思われるかもしれません。しかし残念なことに、世の中には「自分なら絶対に買わない」という商品を生み出し、販売している企業が多数存在します。

 実際、メーカーの商品企画者やマーケターに会ったとき、「自分でその商品を買うことはありますか?」と聞くと、「自分は買わないけれど、昨年売れたから」「こういう設定のペルソナなら買うはず」「他社で売れているからヒットする」という答えが返ってくることが往々にしてあります。ビジネスとしては成り立っているかもしれませんが、僕はやはり、他でもない自分自身が最高だと感じられるものを作り続けたいと思っています。

――普段使われている財布もファクトリエで売られているものですか?

山田 そうです! とても使いやすいので愛用しています。使い方のこだわりは、ポイントカードを入れていないこと。ポイントカードに惑わされて無駄な買い物をしないようにするためです。あとは、何十年も前に「福沢諭吉が見えないようにお札を入れるといい」と聞いてから、自然に1万円札を裏向きにして入れるようになりました。

 ポケットの部分には、地元の熊本でお正月にひいた七福神のおみくじと、美術館や映画館のチケットが入っています。基本的に、「安い値段で多くの物を買いたい」という欲よりも、自分が価値を感じたり、ポジティブになれたりするものにお金を使いたいと思っているので、割引券などの類も入っていません。だから財布の中身を頻繁に整理しなくても、片付いた状態をキープできています。

お札に書かれた顔が見えない向きで入れている。ポイントカード類は一切入っていない
お札に書かれた顔が見えない向きで入れている。ポイントカード類は一切入っていない
ファクトリエの財布。皮がなめらかで使いやすい。赤や緑、青などの色展開をしている
ファクトリエの財布。皮がなめらかで使いやすい。赤や緑、青などの色展開をしている
地元の熊本でお正月にひいた七福神のおみくじ
地元の熊本でお正月にひいた七福神のおみくじ

取材・文/華井由利奈 写真/花井智子