肉、油が食べられない・・・体重48kgから32kgへ

鈴木 まず大好きだったお肉が食べられなくなり、脂っこいもの、油が入ったドレッシングも食べられなくなりました。ご飯も毎回計量して決めた量しか食べなくなったし、外食もできなくなりました。昼休みも学食には行かず一人で図書館で過ごす時間が増え、体重が増えたらどうしようという不安だけが、どんどん膨らんでいきました

 体重はたった4~5カ月で32kgまで落ち、体調が良くないので練習も休むようになって、大学に行くこともつらくなりました。さすがに、コーチや大学の部長がおかしいと気づき、病院に連れていかれました。医師からは、「このままではトップレベルの競技復帰は不可能だ」と言われ、目の前が真っ暗になりました。

 頑張らないと周囲から認めてもらえないとずっと思っていたので、スケートができない自分は価値のない人間だと思ってしまって、もうあの頃は自暴自棄になっていました。

―― そんな状態からどのように立ち直られたのでしょうか。

鈴木 ガリガリになってスケートもできなくなって、食事も喉を通らなかった私を、母が受け入れてくれたからでしょうか。最初は、母から「食べなさい」「お願いだから食べて」と泣きながら言われましたが、せっかく作ってもらったご飯がどうしても食べられず、そんな自分を責めてばかりいました。

 でもあるときから母は、「食べられるものから食べよう」と言ってくれるようになりました。「点滴で栄養を無理やり入れるのではなく、口から食べられるものだけ食べればいいじゃない」と。そう言われた時、「こんな私でも生きていていいんだ」と思えることができました。

―― お母さんの言葉がきっかけになったんですね。

鈴木 というのも、昔から承認欲求が強い私は、スケートを頑張って初めて自分が生きる価値が生まれ、周囲から認めてもらえるのだと思い込んでいました。でもスケート云々ではなく、「とにかく生きていてほしい」という母の気持ちが伝わってきたとき、一日一日一生懸命生きるだけで十分なんだと思えるようになれたんです。「目標は達成できなかったけれど、それでも私、頑張ったんじゃないかな」と思えるようになり、自分に優しくなれました。

 また、もともと気持ちが弱いのに、ずっとそれを隠そうとしていました。でも、摂食障害によって自分の弱さがすべて明るみに出た結果、自分の弱さを直視して受け入れられるようになった。サポートしてくれる人たちに感謝できるようになり、この人たちに喜んでもらえるように、頑張りたいとも思えるようになりました。

鈴木さんが摂食障害から立ち直ったきかっけ/1 「とにかく生きてほしい」という母の気持ちが伝わってきた/2 自分の弱さを直視して受け入れられるようになった/3 サポートしてくれる人に感謝できるようになった