お肉が食べられるまで3年かかった

―― それからすんなり摂食障害は克服できましたか?

鈴木 いえ。休んだのはワンシーズンですが、お肉が食べられるようになるまで3年はかかりました。食べられたと思った翌日、食べることが怖くなるというような波があって……。落ち込んだときはその都度、母に電話したり、医師のもとに駆け込んで点滴を打ってもらったり、スポーツ心理学の先生に自分の話を聞いてもらったり、栄養士の先生から栄養の知識を学んだりして、様々な方のサポートのおかげで少しずつ元の状態に戻っていきました。

 約5カ月間リンクに立てず、1カ月のリハビリ期間を経て練習を再開。以前のようには滑れませんでしたが、摂食障害になってから1年半後には、全日本選手権に出場できました。この頃から、やっとアスリートになれたような気がします

―― そのときのことは、記録につけていますか。

鈴木 練習日記はずっと書いていて、練習内容はもちろん、体重と食事内容を記録し、体調や心理状況を○△×で評価していました。記録し続けることで、食事がきちんと取れているときは体が動くし、体がしっかり動けばメンタル面が良好だということを実感できました。食欲で風邪の前兆にも気づけるようになりましたね。

 体重は、体調が安定してきてからは日記に書かないようになりました。というのも、体調が安定すると、それまで1日5~6回乗っていた体重計に乗らなくなって。数字に縛られなくなり、数字ではなく自分の体調などの感覚を信じるようになりました。今日はちょっと体が重く、だるいなと思えば、これを食べようとか、睡眠をしっかり取ろうなどと、自分で対応できるようになりました。

「さまざまな方のサポートのおかげで摂食障害から1年半後には全日本選手権に出場できました」
「さまざまな方のサポートのおかげで摂食障害から1年半後には全日本選手権に出場できました」

―― 当時、浅田真央さんや安藤美姫さんといった選手が活躍されていましたが、彼女らの存在を、鈴木さんはどう感じていたのですか。