目標に向かってたゆまぬ努力を続けるオリンピアン。日々の厳しい練習だけでなく、周囲からの大きすぎるプレッシャーにライバル選手の動きなど、超えなければならないハードルがたくさんあります。本連載ではそんな中、彼らはどのようにして栄光の舞台で自分の力を発揮したのかを伺います。今回登場するのは元競泳五輪日本代表の松田丈志さん。後編では厳しい練習、周囲からのプレッシャーに屈しないために活用したノートについて伺いました。現役最後の1ページも見せてくれました。
上 松田丈志 支援先探し、逃した金メダル…葛藤した現役時代
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ノートで思考の癖を知り、自分をコントロールした
日経doors編集部(以下、――) 前回の松田丈志 支援先探し、逃した金メダル…葛藤した現役時代で、メンタルはテクニック次第でコントロールできるとおっしゃっていました。
松田丈志さん(以下、松田) 本来、ケガさえしなければ、計画通りに練習を積み重ねると結果は付いてくるはずです。でも、プレッシャーに弱い人はレース本番で自滅し、成果を発揮できません。メンタルは、その人の思考次第で、数秒もあれば良くも悪くも変わります。でも、自分の思考の癖を理解できれば、軌道修正ができます。
自分がプレッシャーに弱いと自覚できれば、ライバルの存在やメディア、周囲の声ではなく、ストロークやスタートといった泳ぎの技術に集中するように意識すればいい。意識の矛先を自分に変えれば、余計なことを考えず周囲の雑音に左右されることがないので、プレッシャーや緊張が和らぎ、冷静な自分に戻れます。
そうした自分の思考の癖を知り、コントロールするために役立ったのがノートです。僕は中学生の頃から練習ノートを毎日書いていて、最初はコーチに書くように言われて始めましたが、次第に書かないと気持ち悪いほどの習慣になりました。