書くことで体調やメンタルの管理

―― ノートはいつから書いているんですか?

上村 世界遠征に行き始めた17歳の頃からです。目標を頭の中で考えるだけではなく、紙に書いて明文化した方がいいと当時のコーチに教わりました。

 最初は、練習メニューと食事内容、起床時の体調などを記録しているだけでした。10代の頃は書いていない日もあり、恐らく自分に足りないものが多すぎて、何をどう書けばいいのか分からなかったのだと思います。でも書き続けているうちに、練習メニューだけでなく、練習した結果どの部位に負担を感じたか、どんな風に動けば技術の再現性が高くなるかといった、その時々に感じた感覚を書き出せるようになりました。何をすると自分がどう変化するかが分かってきて、書く内容も少しずつ具体的になってきたのだと思います。

―― 書くことの効能が感じられるようになってきたんですね。

上村 そうですね。書くことの目的の1つに、自分の感情の起伏に振り回されるのが嫌で、何をしたら不調になり、何をすれば精神が安定するのか知りたかったんです。実際に、調子が悪い日の数日前のページを見返すと外出時間が長くて疲労が溜まっていたり、腰が痛くなった前のページを見返すと、夜に暖かい格好で寝ていなかったりして、不調をきたすのは、何らかの原因がありました。記録に残すことは体調を自己管理するために重要だと実感しました。

―― 書いてないとなぜ不調になったのか、分からずじまいでいっそう不安になりますよね。体調管理だけでなく、メンタル面でもノートに支えられたそうですね。

上村 人に話すことで気持ちを落ち着かせることもできますが、身近な人でも、私の悩みをすべて理解してもらうのはすごく難しいと思います。実際に話して、なぜ分かってくれないのかと悩んだり、私の考えがおかしいのかなとさらに悩んだりして、負のループに陥ることもありました。

 でも自分の思いをそのままノートにつづるだけでスッキリするし、翌日見返すと「なんでこんなに悩んでいるのだろう」と客観視して、また今日から頑張ろうと思えることができた。基本的に1カ月に1回ぐらい悩んでいるページがありましたが(笑)、書くことは、ネガティブな自分からポジティブな自分に戻るための大切な作業だったと思います。

「書くことはネガティブな自分からポジティブな自分に戻る大切な作業でした」
「書くことはネガティブな自分からポジティブな自分に戻る大切な作業でした」