キャリアを再開する女性たちが輝ける場所

 これまで「蚊帳の外にいた(と感じてきた)」40~60代の女性たちの中には、家庭の事情や時代背景によって、20年以上仕事の現場から離れている人もたくさんいます。ですが、私は、それをブランクだとは思いません。別のフィールドで経験を積んだ期間だと思うのです。

 家庭を優先してきた私たち世代は、地域活動やPTA、子育てなどを経て、多様な人たちが集まるダイバーシティな組織での活動を経験し、高いホスピタリティの意識を持っている人がとても多い。これは、立派なキャリアです。これを自分たちで活用しない手はありません。

 私自身、子育てに専念した17年間の専業主婦を経て、47歳で仕事に復帰しました。「給食のおばちゃん」から始め、時給1300円の電話受付のパートからキャリアを築き、外資系一流ホテルの営業開発担当副支配人などのマネジメント職にも就くことができました。

 ただ、私がもし、金融の世界で仕事を再開していたら、このようにキャリアをゼロから築くのは難しかったでしょう。ポジションは限られているし、既存の昇進・昇格システムの中でキャリアを積み上げていくのは厳しいものがありますから。これからキャリアを再開する人やキャリアを築きたいという女性は、伸びしろのある業界で働くことに大きな意味があるのです。

 日本を訪れる観光客はこの10年で3~4倍に増えています。一方で、観光産業の労働人口は微増で、同等には増えていない。人手不足の観光産業に、労働ニーズがあることは間違いありません。そこで、私は観光産業に着目し、今、観光庁と一緒に、観光業で女性がキャリアを築くためのプロジェクトに取り組んでいます。

 観光サービスの業界の仕事というとホテルの清掃など地味な仕事だと敬遠する人もいますが、プロとしてスキルと経験を磨けば、エグゼクティブハウスキーパーという専門職に就くこともできますし、多様な人材を育てるチームのマネジメント職に進む人もたくさん出てきています。

 これまで、キャリアのレールに乗ってこなかった(乗れなかった)女性たちにとって、観光業で仕事をすることは、まさにビジネスチャンスなのです。能力がある人なら、着実にステップを重ねることができます。ほかの業界よりもはるかに早く、パートや派遣の仕事のその先のキャリアをつかみ取ることができる。観光産業の仕事は、女性の社会進出のツールといっても過言ではないでしょう。