世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位とさらに後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ首長国連邦より下位に位置する日本。各界のリーダー達に意見を聞いた。

 夫の海外赴任を機に専業主婦になり、17年間の専業主婦期間を経て、47歳で仕事を再開した薄井シンシアさん。「給食のおばちゃん」から始め、パート仕事やホテル勤務を経て、外資系一流ホテルの営業開発担当副支配人、ラグジュアリーホテルのディレクターを務めるなど、ユニークなキャリアを積んできた。

 現在、薄井さんは観光庁と女性たちのキャリア再構築プロジェクトに携わり、キャリア再開を目指す女性たちの支援に精力的に取り組む。20年間、海外で暮らした経験もあり、doors世代の娘も持つ薄井さんに、今回のジェンダー・ギャップ指数について意見を聞いた。

薄井シンシア
薄井シンシア
1959年フィリピンの華僑の家に生まれる。日本国籍。国費外国人留学生として20歳で来日。東京外国語大学卒業後、日本人と結婚し、貿易会社に2年勤務。30歳で出産。外務省勤務の夫を支え、専業主婦の道を選び、5カ国で20年間暮らす。娘のハーバード大学入学と同時に47歳で就活、「給食のおばちゃん」、カフェテリアマネジャー、電話受付アルバイトを経て、ANAインターコンチネンタルホテル東京に入社後、3年で営業開発担当副支配人に。ラグジュアリーホテル シャングリ・ラホテル東京に勤務するなど、観光業でのキャリアを積む。著書に『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)

 2019年の世界のジェンダー・ギャップリポートを読みました。日本の順位は、世界で121位。過去最低になりました。経済分野では、労働参加率は79位ではあるものの、管理職比率の男女格差は131位。世界平均を大きく下回っています。

 ただ、私は、この数字結果は当然だと感じました。なぜなら、人口構成比がそれを物語っているからです。45歳から64歳の女性は、現在1680 万人、25歳から44歳までの女性は1430万人(総務省人口推計/2019年12月報)。働くことが当たり前となった世代のほうが圧倒的に少ない。この人口のアンバランスさが、結果的に日本のジェンダーギャップ指数につながっています。少子化の今、この状態が続くと、ジェンダーギャップ指数の改善はどんどん難しくなるでしょう。

女性就業率は高いのにジェンダーギャップ指数が低い理由

 実は、日本の女性の労働参加率は、世界の中でも高いほうなんです。2019年の総務省の労働力調査(2019年11月27日時点)によると、女性の就業者数は3009万人。2019年6月、3000万人を超えたときには大きな話題となりました。2019年11月も、全体では前年同月に比べて53万人増加しており、伸びの8割近くを女性が占めています。日本の女性就業率は、先進国でも高い水準です。それなのに、先進国の中で日本だけがジェンダーギャップ指数が低いのは、いまだに女性就業者の多くが、パートや派遣などの時給の世界、つまり、非正規雇用の枠の中で働いているからです。

 私は、日本のジェンダーギャップ指数を改善させるためには、女性人口のボリュームゾーンにいる40~60代の女性たち、doors世代にとっては母親世代の女性たちを巻き込むことが先決だと感じています。