―― 政治、経済分野でも男女平等に関するクオータ制は提案されてきました。しかし潰されてしまうのでしょうか?

上野 候補者男女均等法も、何年にもわたって女性議員が議員立法で提案してきました。何度も流されながらも、2018年には超党派全会一致で決まりました。そこまでは漕ぎ着けたのです。しかし結局、合意形成は「実効性がない法律を作らせた」ということです。同じことは、男女雇用機会均等法にも、女性活躍法にも言えます。

―― 目標値だけで実効性がないものを作り、そこで仕事が終わっていると。

上野 そうです。実効性がないということでは、「女性活躍法」も「雇用機会均等法」も同様に実効性はなく、名目だけです。各自治体の男女共同参画条例もほとんど実効性がありませんね。例えば公共事業に入札する民間企業について、男女平等度の高い民間業者を入札時に優先するという一項目が入っている参画条例は、今のところ日本にひとつもありません。堂本知事時代の千葉県議会に提案されましたが、保守系政治家に潰されました。

メディアでジェンダーギャップを取り上げないのが問題

―― 特に政治分野についての男女平等指数が低いという結果については?

上野 第4次安倍第1次改造内閣が発足(2018年10月)したときに、女性の入閣がわずか1名だったというのは、全体から考えるととんでもないことだったんですが、それをニュースにしたメディアが日本になかったことに私は愕然としました。

―― 発信に臆病なメディアの問題もあるということですね

上野 臆病というより、政治部の男性デスクに関心がないのでしょう。

―― 女性政治家は、足を引っ張られやすいのでしょうか?

上野 特に政治分野においては、それは女性のみの問題ではありません。男性も大いに足を引っ張られる世界ですから。それよりも私が感じるのは、女性閣僚および女性政治家の、政権での使われ方ですね。足を引っ張られるというよりも、むしろ矢面に立てて使い捨てられる、そんな印象さえあります。政権の意向を忖度した踏み込んだ発言をさせて様子見をして、先兵にして使い捨てるという感じですねぇ…。

男性リーダーが多数の日本企業 変わらなければジリ貧に

―― 上場企業の役員の女性比率は2019年で5.2%でした。逆に、女性役員が1人もいない企業はまだ6割近くあります。政府は2020年までに10%と言っていますが、こちらもほぼ未達ですね…。

上野 そもそもこの問題も、強制力のない法律ばかり作っているので未達なのは当然。女性活躍推進法を2015年に作った際にも、当初は「取締役と役員を男女比4割にせよ」という数値目標を課していました。しかし経営団体の反対に合い、あっという間に数値目標を引っ込め、強制力がまったくない努力目標だけに。まったく腰が退けています。

―― 資生堂や味の素などの企業が自主的に集まり「30%クラブ」という組織を作り、企業の役員に占める女性比率を30%に向上させる活動はしているようですが。

上野 もともと女性マーケットを対象にしている資生堂のような企業ですら30%を目標にしなければならないということ自体が、国際比較をすると問題ですね。やはり強制力のあるクオータ制を導入しなければ達成はむずかしいでしょう。その結果、日本は変わらないまま、諸外国が変化する。つまり変われない日本はジリ貧になっていくということです。