韓国は変化のスピードが日本より速い

―― 今回の調査結果では、韓国や中国など近隣アジア諸国よりも下がってしまいました。

上野 韓国は非常に変化の速い国です。日本より速いです。例えば性暴力禁止法もいち早くできましたし、女性省(Ministry of Women's Affairs)もできましたね。日本がもたもたしている間に、韓国はどんどん変わってきました。それに比べて日本は「変わりにくい社会」ですねえ。

―― 政府や企業にいる男性の意思決定層には、どう伝えると効果的ですか?

上野 「あなたの娘が差別されていいのか?」というのが効果的なんじゃないでしょうか。社員や妻ならともかく、娘となればさすがに自分事として考えるでしょう。少子化ですから娘の価値は上がっています。そもそも私は、世界の動きに対して日本の経営者・トップ層は鈍すぎると思います。世界のジェンダー平等問題の動きを見ていれば、ぐずぐずしていられないと分かるはずなのに、危機感が足りなさすぎる。皆、内向きだからですよ。このジェンダーギャップ指数だって、外圧による黒船効果。国外の情報はショックになるけど、国内だけ見ていれば誰も疑問に思わない。メディアが取り上げるようになったのはここ数年。それも女性記者が増えたからです。もっと前から問題点は指摘されているのに、当時は「日本の女はもう十分に強くなったからもうこれ以上強くなる必要はない」「男女共同参画センターはもういらない」とまで言われてきた。そういうところに国際比較が出てきて、よそと比べたらこんなに酷いのか、とようやく気が付いたということでしょう。

「男性稼ぎ型モデル」では結婚も出産も鈍化する

―― ジェンダーギャップの問題は、日本の少子化問題にも深く関わっていると思います。

上野 当たり前です。女性の職業参加を推進して男女の格差を縮めてきた諸外国は、確実に出生率を上げてきています。逆に、日本のような「男性稼ぎ主モデル」、つまり専業主婦モデルを維持してきた社会は、出生率を下げています。データがはっきり出て、実証されています。そのようなことも知らずに少子化対策を講じる政権は、はっきり言って不勉強ですね。諸外国を見れば、女性の労働参加を高めるために、あの手この手の施策を取ってきました。約30年間の変化が蓄積されて、今日の違いを生んでいるのです。

―― 30年かけて、海外も変化を進めてきたのですね。

上野 はい、そうです。男女平等先進国の北欧諸国でも、30代の女性首相が誕生したフィンランドでも、1970年代くらいまではものすごく保守的な男性稼ぎ主型の社会でした。しかし約30-40年かけて、女性を労働参加させるための様々な手を打ってきたんです。男性の働き方を変えるとか、子育てや介護をアウトソーシングするとか。日本はその間何もせず、男性稼ぎ主モデルを維持してきました。個人は社会や国家のために子どもを産むわけではありません。子どもを産むことをディスカレッジ(やる気をそぐ)するような制度や環境が日本にはまだまだあるから、少子化が止まらないのです。

―― さて、今回の調査では教育の分野では、「さほど悪くない」という分析でした。

上野 高等教育の分野で問題はあります。それは大学進学率のジェンダーギャップです。先進国の中で日本だけ、男女比が逆転現象を示しています。つまり、すべての先進諸国は女子の方が大学進学率が高く、男子を上回っています。しかし日本だけが逆転して、約6ポイントの差があります(編集部調べ:2019年度で男性が56.6%、女性が50.7%)。これは極めて不自然な現象で、教育分野では91位になっていましたけれども、もっと低くてしかるべきなんじゃないのかと。

―― なぜ日本だけ、大学進学率の男女逆転があるのでしょうか?

上野 それはハッキリしています。親の教育投資のジェンダー差です。