世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位とさらに後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ諸国より下位に位置する日本。各界のリーダー達に意見を聞いた。

 日本のフェミニストの顔でもある上野千鶴子さん。ジェンダー論を長年研究し、2019年には東京大学入学式で祝辞を読み話題を呼んだ。男女平等において諸外国との比較にも詳しい上野さんに、羽生祥子編集長がインタビューした。

上野千鶴子/社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長
上野千鶴子/社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長

十分悪かったのに、さらに酷くなった

羽生祥子(日経doors編集長、以下――) この結果、上野さんの率直な感想は?

上野千鶴子(東京大学名誉教授、以下 上野) 前年も十分酷かったのに、それよりもっと酷くなっている。諸外国はどんどん改善の努力をしていますから、日本が何も変わらないことで取り残されているという証拠ですね。

―― 国の目標である「202030(指導的地位に女性が占める割合が2020年までに少なくとも30%程度になるようにするという数値目標)」も、2019年調査では11%という状況です。

上野 私たちは日本学術会議主催で「202030は可能かというシンポジウム」をやりましたが、実態があまりに酷すぎるので、あらゆる分野でその達成は不可能であるという結果が出ています。

―― あと何年すれば達成できるかなど、予測はありますか?

上野 現状のままでは、そんな予測、とても立たないです。強制力のあるクォータ制度などを導入しない限り、変化は期待できないでしょう。

努力目標では実効性ゼロ。クオータ制や罰則規定を

上野 例えば昨年国会で、全会派満場一致で候補者男女均等法が成立しました。(編集部注:国会や地方議会に女性議員を増やすために、選挙の候補者をできるだけ男女均等にすることを各政党・団体に努力義務として課す「候補者男女均等法」、2018年に成立)2019年の参院選の前後で、女性議員数は同じ28人。改選前・改選後で変化が無かったということは法律に効果が無かったということです。実効性がないことは予想できました、なぜかというと罰則規定がないからです。政治分野における男女平等先進諸国で、強制力のあるクオータ制を導入せずに、目標を達成した国はありません。

―― 例えばどんな制度を入れたらいいでしょうか?

上野 強制力の中には「罰則規定」があります。日本の候補者男女均等法に、男女均等を達成しない政党に対して、例えば政党交付金を交付しないとか、あるいは達成率に応じて交付率を変えるとか、そのぐらいのことをすればよいでしょう。努力義務に留めたということは、やる気がなかったということです。