女性のキャリア構築を応援? 本気ならもっと柔軟になるべきだ

 子育て中、特に子どもが小さいうちは、何が起きるか分かりません。育児をしながら仕事をしていると、自分の思う通りに物事が運ばないこともよくあります。大事な会議の直前に「お子さんが熱を出したので迎えにきてほしい」と保育園から呼び出しの電話があったり、夜泣きに付き合って睡眠時間が取れず、親のほうが体調を崩したりしてしまうことだってあります。育児でてこずっているときに、同時に仕事も大変になると、両立への負担から、耐えきれなくなり、仕事も育児もどちらも放り出したくなることさえあります。

 シンガポールでは、支える側の祖父母世代も「現役世代の夫婦は共働きするのが当たり前」と考えていて、義理の父母であろうが、気兼ねする必要は全くなし。ママもパパも「世話を祖父母に任せるなんて、子どもに申し訳ない」とはみじんも思っていないようでした。

 日本もそうしなければいけない、ということではありません。でも、本気で女性のキャリア構築を推進するならば、子育て世帯の働き方や子育ての仕方を、社会全体として、より広い視野で見直す手もあるかもしれません。

 日本では、いまだに保育園が足りず、幼い子どもを預けられないがためにキャリアを分断された女性も少なくありません。シンガポールの共働き世帯のように、仕事がある日は、例えば祖父母など、第三者の家に子どもを預けて働いたり、子どもを寮のある学校に入学させたりする選択肢があってもいいし、親だけが子育ての責任を負わなければならないという考え方そのものが変わってもいいのではないでしょうか。

 そして、そういう新しい育て方・働き方を選んだ家族を、社会がもっと受け入れるようになってほしいと思います。そうした変化は、きっと日本の経済や政治の分野におけるジェンダーギャップの解消の一助となるに違いない。私はそう思っています。

文/柏木理佳