世界と比べると、日本には正しいことを主張するリーダーが少ない

 最大の要因はジェンダー平等を目指す世界潮流を知る人が、日本のリーダー層の中にも少なく、これが優先課題であることを知らない人が多すぎることです。現に、順位が公表されると、SNSでは不都合な真実を見たくない人達による「論点ずらし」が多々見られました。いわく、計測の仕方がおかしい。日本がこんなに順位が低いはずがない…。

 目の前に事実があっても認められず自説に固執する人は、海外にもいます。重要なのは意思決定をする人が、抵抗を真に受けてしまうのか、公平性の観点からやるべきことをやれるかです。欧米に限らずアジア諸国の人と比較すると、日本には正しいことを正しいと主張するリーダーが少ないと感じます。そういう中、人々は漠然とした不満を抑え込み、変化を抑制するのに慣れてきました。

 ただし、今年は少し違いました。4月には上野千鶴子さんの東京大学入学式の祝辞が日本中から関心を集めました。ふだん「ジェンダー」など語らない人たちが「女だから」受けてきた抑圧について、テレビやSNSで、そして保護者や家族の中で話し始めたのです。私が春にインタビューをした時、上野さんは「私はずっと前から同じことを言い続けてきた。変わったのは社会だ」と述べていました。

権限がある人は、ジェンダーを最優先課題に据えてください

 Me Too運動でも、変化が生まれています。

 ちょうど12月19日に伊藤詩織さんが受けた性暴力に関する民事裁判の地裁判決が出ました。伊藤さん勝訴の報道から数時間、SNSを眺めていて気付いたのは、「男性が語り始めた」ことでした。それまで加害者の味方をしてきた政治家や保守系有識者が判決を受けて「守り切れなくなった」と書くようになりました。また、海外経験が長い男性知識人や専門家が、はっきりと伊藤さんへの支持を表明するのも目にしました。

 日本の女性が置かれた状況に疑問を持っている人は少なくありません。これまで男女平等について語ってこなかった人が、この問題を語りやすい雰囲気を作ること。また、権限がある人はジェンダーを最優先課題に据えること。まずは、そこから始めてはいかがでしょうか。

注1:APEC事務局の委託を受け、日本のシンクタンク型NPO、Gender Action Platform調べ。調査結果は2017年9月、ベトナム・フエのAPEC女性と経済フォーラムで発表された。

文/治部れんげ