世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位とさらに後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ諸国より下位に評価された日本。各界のリーダー達に意見を聞いた。

治部れんげ/ジャーナリスト、昭和女子大学研究員、東大情報学環客員研究員
治部れんげ/ジャーナリスト、昭和女子大学研究員、東大情報学環客員研究員
1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。2006年~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年からフリージャーナリスト。2018年一橋大学大学院経営学修士。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)。取材分野は、働く女性、男性の育児参加、子育て支援政策、グローバル教育、メディアとダイバーシティなど。東京都男女平等参画審議会委員(第5期)。財団法人ジョイセフ理事。財団法人女性労働協会評議員。豊島区男女共同参画審議会長。

 121位で過去最低と聞いた時、ガッカリしたものの、妙な納得感もありました。3年前、女性活躍推進法が施行されて以来、企業は「女性管理職を増やすこと」に熱心です。それなのになぜ、順位が下がったのでしょうか。

 理由は簡単で、これが国別ランキングであるからです。ランキングは相対評価ですから、自分が頑張ってもライバルがもっと頑張り高い成果を上げていたら、順位は上がりません。

本気になった諸外国は、わずか3年で女性リーダーを猛烈に増やした

 確かに日本も、20年、30年前と比べると女性の地位は上がっていますが、その変化は緩やかです。諸外国を見ると女性リーダーを猛烈に増やしています。つまり、日本以外の変化が激しいのです。投資に例えれば、利率はプラスだけれど、インフレに負けてしまっている状態と言ったらいいでしょうか。

 それは、例えばこんな具合です。アジア太平洋の国や地域で2015年と2017年の数値を比較すると、カナダは閣僚の女性割合が30%から50%に、インドネシアではCEOの女性割合が5%から30%に、ペルーでは最高裁判事の女性割合が9%から27.1%に、ロシアでは上院議員の女性割合が8.4 %から17.1%に増えました(注1)。要するに、本気になれば、わずか3年で女性リーダーを目に見える形で増やせるのです。

 諸外国を見ると、今の課題は「役員に占める女性比率を3割にする」ことが目標です。翻って日本は課長などの管理職を3割にする目標すら達成できていません。

 この状況は、男女平等指数が公開されるようになった2006年から、あまり変わっていません。私は当時、アメリカに留学していて、多くのアメリカ女性が「大企業の役員会に女性が16~17%しかいない」と嘆くのを聞きました。日本では役員どころか管理職に女性が1割でしたから、目標の高さが違うと思いました。

 あれから13年も経つのに、日本は目に見える成果を出せておらず、順位が下がり続けている。この事実を直視した時、政治家や経営者などリーダーのやるべきことは明らかです。それは、ジェンダーの問題を最優先課題にすること。先進国なのに、このような状況は恥ずかしいことですから。

 それにしても、日本で人口減少が始まり、女性労働力の活用が必要だと言われるようになってから、10年以上経つのに、なぜ変化が遅いのでしょうか。