女性の価値を、女性自身が認めていない

 私はいろいろな方たちに講演をさせていただく機会があります。最近、聴衆のほとんどを中年男性が占めるところで講演しました。壇上にいると、聴衆の顔や表情が思いのほかよく見えます。そのときは明らかに、冷ややかな目つきで「どこのだれだ、売名行為だろう」といった感じでした。中には少数でしたが女性がいて、彼女たちもそうした「空気」をまとっていました。とても残念に思いました。そんな雰囲気でしたから、名刺を交換する方はいらっしゃいませんでした。人との交流やビジネスは、信頼から生まれるものなのに。

 女性が女性の足を引っ張ることはないでしょうか。女性が自分の価値を認めていないので、女性経営者やリーダーに対して、同性の方が冷ややかで、尊敬の念を持たない傾向もあるように思います。長年の洗脳、男性たちによる支配が原因なのでは、と私は分析しています。

 変化を起こすのには時間がかかります。男性たちに変化を求めても、彼らに今の地位を手放すメリットは薄いのだから、すぐに状況は改善しないかもしれません。ですが自分の能力を信じてそれにふさわしい行動をすれば、サポートする人たちが周りに集まるはずです。

 世界に目を転じれば、このままでは日本はじり貧になるのは明白です。アジアの経済成長はめざましく、中国はもとより、東南アジア、インドなどがさらなる経済大国になるのは時間の問題。こうした地域のジェンダーギャップが日本よりも小さい(順位が上)のは、経済成長に女性の活躍が欠かせないと知っているからだと思います。そもそも日本が悩む少子高齢化だって、女性が活躍できるようなサポートが十全ではない結果なのでは。日本だけが経済成長に後れをとり、縮んでいかないか心配です。

文/中川真希子(日経doors編集部)