世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位とさらに後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ諸国より下位に評価されてしまった日本。各界のリーダー達に意見を聞いた。

 馬英華(ま えいか)さんは中国弁護士で、日本で会社を経営している。大学時代に日本に留学し、その後エレベーター保守サービスの会社「東京エレベーター」を興した。現在も同社の社長を務める。日中ビジネスの事情に精通している馬さんに、日本のジェンダーギャップ指数が過去最低(121位)になったことについて話を聞いた。中国は日本より順位が上で、106位。

馬英華(ま えいか)/東京エレベーター代表取締役、中国弁護士
馬英華(ま えいか)/東京エレベーター代表取締役、中国弁護士
中国大連市生まれ。1990年早稲田大学法学部に入学。修士を経て99年同大大学院法学研究科博士課程後期課程修了。96年に中国弁護士資格を取得後、97年に東京エレベーターを日本で設立。2004年代表取締役に就任。郵政グループかんぽの宿アドバイザー、中国ビジネス研究所所長、社団法人「新生アジア」代表。女性のビジネスリーダーとして、日本経済新聞電子版に連載を執筆(2015年10月~2017年10月)。近著に「奇跡 強運 幸せのヒント」(文芸社)、「逃げ切る力 逆境を生かす考え方」(日本経済新聞出版社)がある

 日本にはある「空気」を感じます。古い考え方という名の空気。空気だからだれも気づかず、その空気に包まれていることも忘れているようです。

 今回のニュースを聞いて最初は驚きました。でも考えたら、当然という気持ちになったんですね。男性優位の日本社会には問題が山積していますが、ことのほか女性の意識改革が必要だと思います

女性が男性の話をほめ、彼らに気を配り、立てている

 私が指摘したいのは、日本の女性は男性を持ち上げ、実際以上の地位に高めている可能性です。私は日本に30年以上住んでいますが、まだ違和感を覚えることがあります。先日、日本人の男女の知人らと食事をする機会がありました。話のあいだ中、女性が男性の話をほめ、彼らに気を配り、立てている様子がよく分かりました。中国の知人や友人との会話では、男女の別でこうした持ち上げ方はあまりしないですね。

 裏を返せば、女性に自信がないことの証左ではないでしょうか。昔からある、「お父さんは偉い」という暗黙のルールに男性も女性も縛られているように私には見えるんです。これが私の感じる、日本の「空気」。この考えが職場にも、家庭にもまん延していないか、考えた方がいいのではないでしょうか。

家事・子育てに非協力的な男性は捨てますよ

 中国は私の故郷であり、スウェーデンは夫の母国のため、両国の女性を間近に見てきました。

 中国もスウェーデンでも、一般的に男性は、働く女性を支えるのは当然だと思っています。中国では夫が早く帰り、食事を作って妻の帰りを待つという光景をよく見る。妻の方が夫よりよほど稼ぐ世帯も多いから。スウェーデンでも、夫が食事の用意や子どもの送り迎えを普通にこなしています。なぜでしょうか。

 まず、両国ともに専業主婦の割合が非常に低い。女性は強く、家庭は夫婦が協力し合って初めて成り立つということを理解しています。私は、地元の女性がどう振る舞うかをよく知っています。女性が家事・子育てに非協力的な夫に離婚を突きつけるのは当たり前。そんな男は捨てますよ! 男性も、女性に捨てられてしまうので一生懸命です。

 日本ではそうはいかないのでは。女性は男性を支えるのがいいと思われていますよね。どんなに女性が優秀でも、仕事で成果を出し、家庭で家事・子育てをすべてやるのは不可能。肉体的にも持たず、楽な方へ流れてしまう。これでは能力が生かせません。

 女性は自分に自信を持ち、新しい考え方を吹き込むべきです。私は日本のエレベーター保守業界で22年間、エレベーターのメンテナンスとリニューアルという2つの事業を手掛けてきました。女性が極めて少ない業界ですが、私が工夫してここまでやってこれたのですから、自信があれば、女性はもっといろいろなことができるのです。

 本当なら活躍できるはずの女性たちに伝えたい。もっと意識を変えて、自信を持って、やりたいことをやってください、と。業界で、仕事場で、これまでだれも予想もしなかったことを言ったりやったりすることで、「そんなことありだろうか」と多くの男性たちに思わせる、それだけでも「よそ者」の価値はあるんです。